
海の忍者・潜水艦が進化! 艦長らがのぞく潜望鏡が消えた!? 隊員「たいげい型から非貫通式に」

暗闇の深海を音もたてずに密かに潜航する乗りものといえば、そう、海の忍者と言われる「潜水艦」。国家機密の塊とされるが、特別な許可を得て艦内を取材。その能力や設備は、時代とともに大きく進化していた。
国家機密の塊! 最新鋭の潜水艦「はくげい」に潜入!

広島県・呉市。かつて戦艦「大和」の建造も手がけたこの町に、海上自衛隊の潜水艦基地がある。2023年に就役したのは、たいげい型潜水艦「はくげい」。白いマッコウクジラを意味するこの巨大潜水艦は全長84メートル、乗員約70名。ディーゼルエンジンで発電し、リチウムイオン電池でモーターを動かす、最新鋭の潜水艦である。

艦内は3つの区画に分かれ、厳重な壁で仕切られていた。
まず向かったのは、エンジンと発電機がある区画。保守と点検が欠かせない潜水艦の心臓部だ。次に艦の中枢を担う「発令所」に入る。
潜水艦をどのように操作しているのか。ハンドルかと思いきや、なんとジョイスティック、まるでゲーム機のようである。さらに驚いたのは、どこを探しても、映画などでおなじみの「潜望鏡」が見当たらないことだ。
映画でおなじみ 艦長らがのぞく“潜望鏡”が消えた!

隊員:「皆さんがイメージされるような潜望鏡は、たいげい型から“非貫通式”になりました」
艦長らが潜望鏡をのぞき込み海上の様子を探る―。映画などではそんなシーンがおなじみだ。ところが、この「たいげい型」からは、長く伸びる筒の先にデジタルカメラを仕込み、複数のモニターに映し出せるようになった。確かに大人数で監視や分析をした方がミスを防げる。
また、発令所までつながっていた従来の貫通式の潜望鏡が廃止されたことで、筒の破損で海水が流れ込むリスクが減り、発令所のスペースも広がったという。
わずかな“生活雑音”も命取り!

密閉された潜水艦の中で、隊員はどんな暮らしをしているのでしょうか。
細い通路のわきに、ずらりと並ぶベッド。シングルサイズで快適とは言えないが、唯一のプライベート空間だ。ただ通路の床には、特殊な素材が使われていた。
隊員:「やわらかいゴムの材質のものを敷いてあります。ベッドからの出入りとか、歩行する際の雑音を防止するためです」

“雑音対策”は徹底していた。
休憩スペースをのぞくと、テレビを見ている隊員がいたが、その耳にはイヤホンが! もしも生活雑音が敵艦のソナーで感知されたら……。わずかな雑音が命取りとなる場合もあるのだ。
そんな隊員たちの楽しみが食事。この日の献立は調理長自慢のスパイスが効いたカレーだった。カレーは金曜日の定番だという。そこにはこんな意味もあるそうで。
隊員:「時間感覚が薄れてきますので、カレーを食べて金曜日を自覚するんです。僕は出港しているんだなって」
極秘の任務と家族への思い
そんな「はくげい」を指揮する艦長の個室を訪ねると、片隅に家族写真が飾ってあった。
前田艦長:「我が国の潜水艦がいつ出て、どこに行くか推察されないよう、家族に出港や入港の日時を伝えることはできません。離れている期間が長く、連絡も取れないのは、辛いなというのはあります。逆にいないが故に、妻に感謝したり、子どもと会う時間が愛おしいと感じられるのです」
寂しさを押し殺し、彼らは国防の最前線に立っていた。





