市街地へと行動範囲を広げるクマに、田畑を荒らすイノシシ 獣害を取り巻く「ビジネス最前線」

市街地へと行動範囲を広げるクマに、田畑を荒らすイノシシなど、野生動物による人や農作物への被害が増えています。獣害をとりまくビジネスについて深掘りします。
スマート技術を活用した対策

東海3県の農作物の年間被害額は、2010年度の15億6千万円をピークに減少傾向でした。しかし、2022年度に増加に転じ、2023年度は9億以上に。中でも愛知県は4億7262万円で、都道府県別で6番目に被害額が大きくなりました。
獣害による農作物の被害を減らすためにいま注目されているのが、AIやITなどスマート技術を活用した対策です。

映像を見ると、おりの中にイノシシの群れが次々と入っていきます。全部で16頭のイノシシがおりの中に入ると、おりの扉が、自動で閉まりました。捕獲のために使ったのは、スマートフォンです。
担当者はスマートフォンの画面上でおりの中の様子を確認。扉を閉めたい場合は、ボタンを押すだけです。

開発したのは、三重県伊勢市の電子機器メーカー「アイエスイー」。センサーの技術に強みを持つ、ものづくり企業ならではの商品です。この会社の実証実験では、年間で50頭ほどのイノシシやシカの捕獲に成功しています。いまでは、このシステムは全47都道府県で導入が進んでいて、自治体からの受注が大半だということです。
「ジビエ」で獣害対策が進む地域も

また、野生の鳥や獣の肉「ジビエ」のおかげで獣害対策が進んでいる地域もあります。その1つが、岐阜県揖斐川町です。シカの肉を使った料理を提供する店「シャルキュトリー・レストラン里山きさら」を取材しました。

実は、「シャルキュトリー・レストラン里山きさら」が2016年にできたことで、地域に良い変化が生まれました。地域の猟師が3人から、16人に増えたんです。猟師が捕獲したシカを加工施設に運び込むと、害獣駆除の報奨金を受け取ることができるからなんです。
さらに猟師が増えてシカの捕獲が進むことで、周囲の農家への被害も減少しました。ジビエとして消費される捕獲動物が全国では1割に留まるなか、揖斐川町では捕獲、解体、販売の流れを役割分担することで、毎年、5割を超えます。

農作物の被害金額には表れない被害も目立っています。シカに何度も田畑を荒らされて農家を辞めてしまう人がいたり、クマによる人への被害が深刻化している地域もあります。地域の枠組みを越えた国全体での対策を急ぐ必要があります。
(10月27日放送「東海ビジネススコープ」より)





