
高校生が無料で子どもを預かる「1日保育園」実施 口コミで人気が広まり約400人が利用 コロナ禍という逆境から生まれた“子育て支援”と“学びの場” 少子化対策の新たなモデルケースに

厚生労働省の発表によると、2024年度の出生数が初の70万人割れとなる68万6061人、一人の女性が一生の間に生む子どもの数を示した合計特殊出生率は過去最低の1.15を記録しました。少子化対策が待ったなしの状況となるなか、名古屋市の高校で“子育て支援”と“学びの場”を両立する、新たな取り組みが進められています。
コロナ禍で始めた1日保育園 「行けないのなら来てもらおう」

名古屋市昭和区の桜花学園高校で、6月14日と21日の2日間、保育コースの生徒たちが2~6歳の子どもを無料で預かる「1日保育園」が実施されます。保育実習の一環として行われているこの取り組みは今年で5年目を迎え、これまでに約400人が利用してきました。
担当するのは保育コースの3年生。13人体制で2歳から6歳の子どもたちを半日無料で預かります。生徒たちは事前に授業で保育計画を立て、手遊びや工作、読み聞かせ、身体を動かす総合遊びなど、オリジナルの保育プログラムを考案して実践する予定です。
この取り組みがスタートしたきっかけはコロナ禍でした。同校では長年、近隣の保育園に実習を受け入れてもらっていましたが、新型コロナウイルスの影響で受け入れを断られる事態に。生徒たちの実習先がなくなり困っていたところ、当時の教頭が「行けないのなら来てもらおう」という発想で「1日保育園」を企画したといいます。
初年度は園児募集に苦労したものの、少しずつ口コミで広まり、現在では受付開始からわずか3日ほどで定員が埋まるほどの人気ぶり。リピーターも多く、地域の子育て支援の場として定着しつつあるようです。
過去に利用した保護者からは、「ママ友とのモーニングの時間にできている」「自宅の掃除時間が少しでもできるのが嬉しい」「病院・美容院に行く時間に当てられて大変助かる」「夫婦の時間を持つのに活用させていただいている」という声が寄せられています。
子育て世代にとって、短時間でも子どもを預けられる場所があることは、大きな助けになっているようです。
保育士を目指す高校生の“学びの場”に

「1日保育園」は子育て支援だけでなく、生徒にとっても貴重な学びの場となっています。
桜花学園高校の保育コースの生徒は「全国高等学校家庭科保育技術検定」にも挑戦していて、2024年度は愛知県内の1級合格者19名のうち、3名を同校から輩出しました。
検定合格を目指す生徒たちは「1日保育園」を実践の場として活用。質の高い保育の実践をすることが、生徒たちのスキルアップや大きな自信にもつながっているようです。
過去に参加した生徒たちからは、「深くふれあうことで子どもの気持ちにしっかり寄り添って接することができた」「子どもと関わる楽しさと難しさ、保育士の大変さとやりがいを実感した」などの声が集まり、成長の機会となったことがうかがえます。

また、保育コースの生徒たちは、保育や子どもに関連する新聞記事をスクラップし、要約と自分の意見をまとめる「新聞レポート」にも取り組んでいます。スマホ依存の問題やプール事故防止など、子どもの安全や健全な発達に関わる様々な社会問題について考察し、将来の保育士として必要な視点を養っています。
コロナ禍という逆境から生まれた「1日保育園」。子育て支援という社会的ニーズにも応えるだけでなく、保育士を目指す高校生に学びの場を提供するという、少子化対策の新たなモデルケースになっていくかもしれません。
【桜花学園高校「1日保育園」概要】
▼開催日:6月14日(土)・21日(土)
▼場所:桜花学園 チェリープラザ棟1F・ 保育実習室
▼時間:受付・8:45~9:00 保育開始・9:00 保育終了・11:45
▼定員:先着13名
▼年齢:2歳~6歳
▼費用:無料
▼利用方法:開催週木曜までに下記へ申し込み
<メール>m.sugahara@ohka.ac.jp
<電話>052-741-1221