
暑さに強く収量の多いイネ「にじのきらめき」と一石二鳥の「再生二期作」でコメ問題の打開へ 農業技術開発者、愛知・岐阜のコメ生産者の模索

コメ問題の打開策となるか―。
去年の夏ごろに始まった「令和の米騒動」から現在の政府による備蓄米放出まで、コメに関連する話題が尽きません。
価格の高騰を招いた市場のコメ不足の要因として、猛暑による品質低下で流通量が減少した点も挙げられ、地球温暖化によって、日本人の主食であるコメの確保にいよいよ影響が及びつつあります。
そこで一部の生産者は、高温対策を考慮しながら収量拡大を目指した米作りを模索しています。
国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」は、暑さに強い主食用米として「にじのきらめき」を開発しました。

それまでの品種は、温暖化の進行によりイネの実る期間が高温傾向になると、収穫した米粒は白く濁り食味や品質が低下しました。
一方、「にじのきらめき」は高温耐性に優れ、外観や食味を保つことができるといいます。

コシヒカリとそれほど食味が変わらない点、もみの数が多くてよく実り、やや大粒でコシヒカリに比べて15%ほど多収な点などのメリットがあるのに加え、茎の背丈が短くて倒れにくく高い収穫率が見込めます。
なおかつ、害虫を媒介とする病害にも抵抗性が強く、散布する農薬を減らすことも可能です。
2018年に品種登録出願されてから、多くの生産者が講習会を経て導入するなど全国的に普及が広がっています。
岐阜県・北方町では、「にじのきらめき」の生産・普及・販売の拡大を目的として、20年に町、岐阜農林高校、JAぎふ、農家で構成される担い手協議会が連携して、さまざまな研究や活動に取り組んでいます。
JAぎふの担当者によりますと、従来からコシヒカリを栽培してきたが、近年は温暖化の影響を受けて収量が減少し品質の維持も困難になってきた、ということです。
生産者の高齢化や後継者不足もあり、地域一体となって取り組みを進めているといいます。
さらに新品種「にじのきらめき」を生かすのが、「再生二期作」という農法です。

農研機構では、約20年にわたって主席研究員の中野洋さんが、気候変動下で有効な技術開発に取り組んできました。
再生二期作は、イネをなるべく地表から高い部分で刈り取り、養分を残すように刈った切り株から新しい芽である「ひこばえ」を育てて、年内に稲穂をもう1度実らせます。
農研機構の中野さんは、温暖化が稲作に与える悪影響に懸念を示す一方で、温暖化による気温上昇で生育期間が延びたイネを、年に2度収穫できるようになってきた、といいます。
中野さんが2021、22年に福岡県筑後市で「にじのきらめき」の再生二期作を実施した試験栽培では、2度の稲刈りを合計した10アール当たりの平均収量は約950キログラムに達しました。
福岡県の同じ面積当たりのコメの平均収量482キログラムの倍近い結果です。
愛知県でも、実験的に再生二期作に挑む生産者も見られます。
農事組合法人「ファームズ三好」(みよし市)では、従来の一期作でコシヒカリを栽培していましたが、減少した収量を増加させるために今年度に初めて再生二期作に取り組むそうです。
ファームズ三好の代表は「再生二期作を実施するには採算がこれまで合わなかったが、近年の米価が上昇した結果、採算が合うようになったので再生二期作に挑戦して結果を出したい」と期待を込めます。