50代の7割以上「老後の資金確保ができていない」会社員が退職までに老後資金を作る方法
「仕事で忙しいけど、金融知識はあったほうが良いよな」。頭では理解していても、日々のタスクや投資のリスクを考えて二の足を踏んでいるミドル世代も多いのではないでしょうか。将来を考えるうえで、お金の話は避けては通れません。
そこでファイナンシャルプランナーの山口京子さんに、50代の会社員がいまからでも始められる老後資金を考えた資産形成の方法を教えてもらいました。
年収差1500万以上! 投資している人との格差に驚愕
そもそも「投資をしているか」「していないか」という点で興味深いデータがあります。All Aboutが調査した「家計に関するアンケート」によると、年収が同じでも、投資をしている人のほうが、投資をしていない人よりも資産額が多くなる傾向にあるといいます。つまり「投資格差」があるんです。
すべての世帯年収帯で、投資をしていない人と比べて、投資をしている人の方が金融資産額の平均が高く、差が大きいところでは年収800万円帯で1633万円もの差が見られました。
山口さんは「投資をしている人は金融リテラシーが高い人。自分で投資や保険、貯金といった具体的な情報を取りに行く人」と話します。金融リテラシーが高まると金融の正しい知識が身につき、特殊詐欺や投資詐欺にも引っかかりにくくなるそう。
「老後の資金確保ができていない」割合は72.8%
さらに金融庁の「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果2021」によると「今後もリスク性の商品は買わない」と回答した人は50代で約6割。この割合は他の20代、30代、40代と比べても大きな割合を占めています。
「50代は金利の高いバブルの時代を経験しているため、『株で増やさなくてもいい』という考えがしみついているのでは」と推察する山口さん。
「バブルが崩壊したあとの株の危うさも刷り込まれていて、株をやってまで投資をしてお金を増やそうとは思わないマインドがあるのではないでしょうか」
ただ、金融広報中央委員会が行う「金融リテラシー調査」では「定年退職後の生活費」が今後必要と意識している人の中で、50代で老後資金の必要額を認識していない割合は51.5%、資金計画を立てていない割合は65.2%、資金確保ができていない割合は72.8%という結果に。なんと50代の7割以上が老後資金を確保できていないのです。
もし50代で「投資をしない」という選択を続けるとどうなるのか。ファイナンシャルプランナーの山口さんは「老後資金に差が出る可能性がある」との考えを示します。
「老後資金に差が出るかもしれません。50代でも会社で企業型 DC(企業型確定拠出年金)で毎月積み立てて、お金を確実に増やす、投資信託にお金を入れる方法もあります。一方、金融リテラシーが低い人は定期預金にしかお金が入っていないので、老後資金に格差が生じてしまいますね」
――「働いたら年金が減らされる」と聞いたことがあります。
「心配しなくて大丈夫です。年金プラス給料、正確に言うと報酬比例部分。プラス給料がひと月50万円を超えなければ、減らされることはありません。そして減らされない方もいます。ずっと国民年金でいる方、そして『退職後は厚生年金には入らないよ』という方は、どちらも年金を減らされない人ですから、ぜひ頑張って働いてください」
50代は会社員の生涯年収がピークを迎える世代です。子どもが独立して収入に余裕が生まれ、財布のひもが緩む家庭も多いでしょう。しかし、50代を過ぎたらすぐに定年は見えてきます。「役職定年」や「定年」が解かれた時の収入の落差は大きいので、気を引き締めて自分の固定費や変動費を見直しましょう。
投資の前に大切にしたい資産形成の3つのステップ
では、投資をスタートさせたい方に向けて、具体的な資産形成の方法を3ステップに分けてご紹介します。
ステップ1 生活費の3ヶ月分から半年分、自営業の方は1年分を普通預金で貯める。
ステップ2 5年以内に使うお金+αのお金を個人向け国債や定期預金で確実に増やす
ステップ3 1と2でも使わないお金でNISAなど投資に使って増やす
最初のステップは出し入れしやすい「普通預金」にお金を入れること。クレジットカードの支払いとか、水道光熱費の支払いとか。その上に絶対に元本割れしない、強靭な資産形成の土台を作ります。
2つ目のステップにぴったりなのは「定期預金」や少し金利が高い「個人向け国債」「円建て保険」などです。これができるだけ分厚いほど、万が一その上にある積極的にリスクを取るような投資のステップに行った時に暴落が来ても、安心して資産形成を続けられるので2番目のステップが1番大事です。
ファイナンシャルプランナー 山口さん:
「確実に増やそうと思うのであれば、個人向け国債を使うのがおすすめです。元本割れがないので、投資初心者にとって安心です。近くの金融機関であれば個人向け国債を購入でき、NISAデビューもできるので近くの金融機関に相談してみると良いでしょう」
ファイナンシャルプランナー 山口さん:
「1つ目と2つ目の資産形成の土台がしっかりできたら、この3つ目の「リターン重視で増やす」。iDeCoやNISAなどで上がったり下がったりがありますけど、リターン重視で積極的に増やしていっていただきたいと思います」
―――退職金の使い道のコツは?
「退職金をそのまま貯金に回す人もいると思いますが、3つの財布に分けておくのが良いと思います。1つ目は普通預金、2つ目は定期預金や個人向け国債。そして3つ目はNISA口座。3つ目の財布はいくらなら積み立てられるのかを割り出して、毎月NISA口座に入れていくことをおすすめします」
土台を固めた「揺るぎない資産形成」こそバラ色の老後を作る
50代以降の投資で重要なのは、何年にどんなイベントで支出があるのかロードマップを作ることです。例えば「子どもの結婚資金を援助したい」と予測がつくものから「親の介護、介護されるのは何年か」といった予測がつかないものまで、思いつく限り考えてみましょう。
自分自身の金融リテラシーを見直し、 投資を適度に活用することで、自分が思い描いていた以上に充実した老後を送ることができるかもしれません。
ファイナンシャルプランナー 山口さん:
「投資で大事なのは“忘れる”こと。値動きに一喜一憂すると、投資が目的になってしまいます。バラ色の老後のために絶対に使わないようにする。毎日値動きを見ていたら、疲れて全然バラ色ではないんですよね。だからしっかり最初に3つのステップに分けて、あとは最低でも5年ぐらいは投資を続けてみてください」
■山口京子さん
愛知県名古屋市出身、金城学院大学卒業。ファイナンシャルプランナー。フリーアナウンサーからお金好きが高じ、2000年よりファイナンシャルプランナーに。プライベートでは、マイホーム購入後、持ち前の貯めワザにより住宅ローンを2年で完済。テレビ出演のほか、「KOKUSAIには愛がある in あいち」イメージキャラクターに就任。新刊「お金も人生も薔薇色!老後計画」はじめ著書多数。