春闘“満額回答”の鉄鋼メーカーに直撃 トランプ関税の影響は? 中小の多くは大幅アップに後ろ向き

高額回答が相次ぐ今年の春闘。東海経済の先行きに不透明感が増すなか、今後の広がりはどうなるのでしょうか。「満額回答」のあった名古屋のメーカーの労使を直撃しました。
物価高のなかで迎えた、今回の春闘。
12日にあった大手企業の集中回答では――。
「総額では、要求通り満額回答です」(トヨタ経営側の会見)
トヨタ自動車グループをはじめ、各社で高額の回答が相次ぎました。
中部鋼鈑「社員のモチベーション向上」

賃上げの動きは広がるのでしょうか。実際に「満額回答」をした会社を訪ねました。
名古屋市中川区の「中部鋼鈑」は、鉄スクラップを原料に鉄製品をつくる電炉メーカーです。
去年は労働組合の要求を超える回答を出し、今年も基本給を月額1万5000円引き上げるベースアップ要求に「満額」で回答しました。
メ~テレは去年もこの会社を取材していました。
「人材を確保していかなければいけないと考えている。社員の処遇をあげて投資するという考え方で、今回の決断をした」(中部鋼鈑 松田将 取締役)
労組側「収益が落ち込むなかで正直驚いた」

今年の「満額回答」について聞いてみると――。
「社員のモチベーションの向上ということを考えて、満額回答という形でお答えしたというような経緯になります」(松田取締役)
労働組合も、賃上げの効果を高く評価します。
「去年に比べると収益が大きく落ち込んでいる状況だったので、正直言うとすごく驚いた。物価上昇の部分で言うと、待ったなしというところもあるので、組合員に寄り添った最大限の回答だったのかなと思います」(中部鋼鈑労働組合 須藤誠哉 執行委員長)
トランプ政権の25%関税の影響は

ただ、取り巻く環境は急変しています。
アメリカのトランプ政権は、鉄鋼製品に25%の関税を発動。
行き場を失った中国の鉄鋼製品が国内に流れ込む可能性もあり、先行きは不透明です。
中部鋼鈑では、製品の独自性から直接の影響はないと見込んでいますが――。
「世界経済全体が低迷することなどがあると、当然ながら日本にも影響するし、我々の業界にも影響するであろうという意味では、注視している」(松田取締役)
それでも、賃上げには引き続き前向きです。
「強みを生かして、きちんとシェアを拡大して、従業員にも還元を厚くしていこうという流れで考えています」(松田取締役)
どれだけの賃上げが実現するかは見通せず

東海3県の企業を対象にした東京商工リサーチのアンケートでは、2025年度に賃上げを予定する企業は、去年に続き8割を超える高水準です。
ただ、どれだけの賃上げが実現するかは見通せません。
原材料高に見合った価格転嫁が思うように進まず、賃上げの「元手」が足りない企業もあるためです。
賃上げを予定すると答えたなかで、連合が求める「6%以上」の賃上げをすると答えた中小企業は、わずか4.9%にとどまりました。
街では「夢のまた夢」という人も

賃上げの期待について、街の人は――。
「トヨタ自動車やアイシンの回答が出たので、だいぶその波が来るとは思っているので、期待したい。期待…いっぱい上げてもらえると一番うれしい」(情報通信業で働く40代)
「(賃上げは)聞いていない。(生活水準は)子ども2人いるので大変。賃上げはしてほしい」(夫が食品系メーカーで働く人)
大手のような満額回答は「夢のまた夢」と見る人も――。
「本当に響いています。家計がやばいです、火の車なので。社会保険料も税金も高い。その分賃上げもされてなくて苦しい。あんなのは大企業だけの話じゃないかと周りでは話していて、私たちには何も響いてこない」(事務系で働く6人家族の人)