壁画を描いてSNSで注目、街を活性化へ 新たな広告ビジネスとして注目 約9兆円のアート市場に食い込め

空間を有効活用した新しい取り組みが4月に開幕する大阪・関西万博のある街で始まっています。注目したのは「壁」です。

大阪市此花区には、23作品のミューラル(壁画)が点在しています。倉庫の壁には「怪獣」、銭湯の壁には大阪ならではタコなど、にぎやかで目を引くアートばかり。このプロジェクト「ミューラルタウンコノハナ」を仕掛けたのは、ウォールシェアの川添孝信社長です。

海外では「ミューラル」と呼ばれるこれらのアート。所有者の許諾を得ずに描かれた「グラフィティアート」(=落書き)と違い、ミューラルは許可を得て合法的に描かれたアートを指します。
ミューラルと企業のコラボレーション

「ウォールシェア」は、広告を出したい企業と壁を提供するオーナー、アーティストをつなぐビジネスを展開しています。壁のオーナーには賃料、アーティストには制作費が支払われ、地域の活性化やアートの普及を目指しています。
例えば、東京・渋谷区の飲食店の壁には「チルアウト」というリラクゼーションドリンクのアートが描かれています。

此花区のプロジェクト「ミューラルタウンコノハナ」も、富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」のプロモーションの一環。街中に点在するミューラルを「チェキ」で撮影して回る企画です。不定期でミューラルツアーも開催しています。

富士フイルム 伊東直哉さん:
「一緒に写真を撮って、そこから会話が生まれてっていうのが非常に魅力の製品かなと、我々はとらえています。そうした部分でも、非常に親和性があるんじゃないかなということで、今回協賛させていただいています」
ミューラルがもたらす街への影響

壁を提供した串カツ伊万里の店主、川西伸郎さんは「結構みんなは写真撮って帰りますね。これ目当てに来るお客さんも増えていますよ」と新たに人の流れが生まれたことを実感しています。
日本経済新聞社 鈴木結衣記者:
「建物の壁面やシャッターなど、元々あった構造物に新たな価値を付与できます。ミューラルは空間に人を呼び込む仕掛けとも言えます。さらに珍しいものや規模の大きいものは、ソーシャルメディア上で話題を呼びやすく、街に人を呼び込むきっかけになると期待されます」

川添社長が「ウォールシェア」を創業したのは2020年。学生時代からヒップホップカルチャーが好きで、海外でミューラルを見るために足を運んでいました。海外では壁画を活用したプロモーションが一般的で、それを日本に持ち込み、ビジネスモデルを組み立てました。

目を引くアートが投稿され、拡散するというSNS時代ならではの効果も期待されています。創業から5年で約200作品を展開し、壁の提供を申し出る動きも増えています。
ウォールシェア 川添社長:
「世界のアート市場は約9兆円あるといわれ、日本は3%未満にとどまっています。市場は大きくなりつつあると感じます」