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シベリアで出会ったロシア人女性と禁断の恋 2人に訪れる転機 忘れられない彼女の表情【戦後80年 大石邦彦取材⑥】

CBCテレビ
08.30(土)07:32

戦後80年の終戦の日は、例年よりも数多くの戦争企画が放送され、他のメディアでも特集された。その終戦直前に日ソ中立条約を破り、日本を攻め、終戦の日を過ぎても進軍していたのがソ連だった。

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1945年8月15日をもって日本軍は段階的に解散し、多くの若者が自由を手にしようとしていたが、そこから尚もシベリア抑留によって捕虜として自由を奪われた若者たちがいた。

その若者の一人が名古屋市に住む長澤春男さん(100)だった。

強制労働に耐えながら、独学でロシア語を学び、中隊長にまで昇進した彼は、ロシア人女性からプロポーズされた。これは敵国でもあったロシア人女性、クリスタル・ターニャとの禁断の恋のエピソードでもある。戦後80年、自身もこれまで80年間封印してきた逸話というが、本人の許しを得て、ここに解禁する。知られざるシベリア抑留体験記として。

ターニャの父親から、自分の娘と結婚してほしいと懇願されたが、春男さんの意思は固かった。

「私は日本へ帰りたい。日本人だから」

その答えを聞いた父親は「やはりそうか」と肩を落としたが、同時に春男らしいと呟いた。ターニャ自身も春男さんの選択に「ハルオらしいわ」と同調してくれたと記憶しているが、はっきりとは覚えていないという。むしろ、その後の展開が衝撃的で、そちらの記憶の方がより鮮明に残っていたからだ。

いつもと違うターニャ

それは思いも寄らない知らせだった。ターニャにも転機が訪れようとしていたのだ。その日のターニャは、笑顔が眩しく白い歯が溢れるいつもの彼女ではなかった。会った瞬間から、少し寂しそうで、やや悲しそうな表情を浮かべていた。

「何かあったの?」春男さんが聞いても、彼女は答えなかった。きっと答えられなかったのだろう。

それを察した春男さんは、何も語らず、彼女が話すまで、話せるようになるまで待つことにした。

なぜだろう、この日の沈黙に違和感はなかった。むしろ、この無の時間がお互いの心を整理する時を作ってくれていたのかもしれない。どれくらいの時間が経過したのだろうか。

ふと横を見ると、ターニャの頬を涙がつたい、その涙を夕陽が照らしていた。

「私、シベリアを離れることになったの」

彼女は、閉じた心の扉をこじ開け、声を絞り出した。

「えっ…」

それ以上、言葉がでなかった。父親の転勤で住み慣れたシベリアを離れ、新しい転属先へ引っ越しをするというのだ。行き先は、ウクライナだった。

春男さんにも転機が…

当時のウクライナと言えば、ソビエト連邦の一角を担い、ロシアと兄弟とも言われるほど結びつきが強い国だった。その当時ロシアによる侵攻、圧政に屈したウクライナは、ロシアの西隣に位置する国。

一方で日本はロシアの東隣に位置する国で、どちらもロシアの力の前に屈し、翻弄されたという点では似ていた。

「あの時は、辛そうな顔をしていたなあ」

春男さんは、当時を振り返り、どこか寂しそうな表情を見せた。

しかし、ちょうどその頃、春男さんにも転機が訪れようとしていた。それは突然の出来事だった。

収容所の所長から前触れもなく「明日、日本へ帰れるから早く支度しなさい」と告げられたのだ。

脳裏に浮かぶのはターニャの顔

「えっ、今からですか?帰れるって、どこへですか?」

「ヤポンスキー(日本)じゃないか」

夢にまで見た祖国への帰国。もう二度と踏めないと思った祖国の大地を、今一度踏みしめることができるのかと思うと嬉しいはずだったが、なぜか心の底から沸き立つ喜びはなかった。唐突すぎて、心の整理がつかなかったからか。やはり、ターニャのことが頭にあったのだろう。

ターニャをウクライナへ笑顔で送り出すつもりが、自分の方が先にシベリアを離れることになってしまったのだから。出発は明日、ターニャに一刻も早く伝えなければいけなかったが腰が重かった。

同じように明日にも帰還する仲間らは、明るい声をあげながら、帰り支度を急いでいたが、日本への出立の準備などには時間はかからなかった。そもそも、荷物などなかったし、持ち帰るものも殆どなかった。唯一の心残りと言えば、ターニャのことだった。

春男さんからの“突然の知らせ” ターニャは

気づけば、春男さんの足はターニャの自宅へ向かっていた。そして、ドアをノックするとターニャが出てきて「ハルオ、どうしたの?」と尋ねてきた。

「ターニャと結婚するよ」そんな春男さんの心変わりを期待していたのかなど知る由もなかったが、その後の展開など予想すらできなかっただろう。すぐさま、ターニャに切り出した。

「明日、日本へ帰ることが決まったよ」

あの時のターニャの顔は忘れることができないという。しかし、驚いた表情を見せた後、笑顔を見せてこう語った。

「日本へ帰れるなんて良かったわね」

その笑顔は無理に作った表情ではなく、心の底から安堵しているようにも見えた。年頃の単なる恋愛とは異なる、1人の人間として最愛の人の幸せを願う、深い愛がそこにはあったのかもしれない。 

シベリアを離れる翌朝、朝陽がシベリアの大地を照らしていた。

【これまでの記事】
・100歳抑留者が初めて明かす 戦後80年の秘密①
・ロシア人女性との“禁断の恋” 命つないだロシア語への執念②
・強制労働先での出会い「瞳は丸く大きかった」③
・忘れられない ターニャの「ボルシチ」④
・「ハルオ、私と一緒になって」 知る由もない祖国の状況・未練⑤

【CBCテレビ論説室長 大石邦彦】

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