サウナや暖炉にカセットボンベを利用 伸び悩む市場に新発想で新規需要の開拓広がる

一家に一台ともいえるほどに行きわたった調理器具の「必需品」カセットボンベ。メーカーが全く違う用途で需要を広げようとしています。

簡易的なサウナですが、内部は摂氏100度まであがり、温度が2時間持続します。その熱を生むのが、カセットコンロのボンベ。4本で1000円程度です。
薪などと比べて持ち運びやすく、煙も発生しないためさまざまな場所で楽しめます。これを開発しているのは、カセットボンベ販売で高いシェアを誇る「岩谷産業」です。
国内で初めて、家庭用プロパンガスを全国販売

岩谷産業は95年前に大阪で創業したのち、国内で初めて家庭用プロパンガスの全国販売を開始。いまは次世代エネルギー、水素の活用に力を入れます。一方で 国内初「ホースのいらない卓上コンロ」を発売。それから半世紀以上、カセットボンベを使った「おでん鍋」にたこ焼き機など、さまざまな製品を生んできました。
そのほとんどは「調理で使うもの」でした。

岩谷産業 マーケティング部 土橋匠さん:
「従来のカセットボンベの使い方、製品では市場が飽和しています。色の違う少しとがった製品開発が必要でした」
カセットボンベの強みを生かし、新たな市場で勝負

岩谷産業はプロパンガスや産業用ガスの販売が主力事業で、カセットボンベやコンロといった製品の売り上げは全体の約3%と伸び悩んでいる状態です。そこでカセットボンベの強みを生かしながら、まったく別の市場に打って出たのです。

例えばテントサウナでは、コンロ同様の使い勝手で自在に温度調整ができ、ガスならではの「強い火力」も生かしています。
価格は一式で30万円ほど。2026年度の発売を予定しています。
岩谷産業 土橋さん:
「今の消費者の嗜好は多様化しています。カセットボンベで『こんなこともできるんだな』ということを、世の中に提示していきたいです」
カセットコンロでコーヒー豆を焙煎!

新たな市場への参入はサウナだけではありません。カセットコンロ専用のコーヒー豆の焙煎機も。コンロで細かく火加減を調整し、「自分だけの味」を追求できます。ほかにもテーブルに置ける「暖炉」。炎の揺らぎをボンベ1本で7時間楽しめます。

さすがに社内でも「需要はあるのか」という声が上がりましたが、いずれもクラウドファンディングで想定を大幅に上回る支持を得て販売に至りました。
岩谷産業 マーケティング部 阿部 周作部長:
「新しい商品を販売していき、さまざまなお客さまに喜んでいただく。それで岩谷産業を知っていただく。大事な役割を持っているんじゃないかと思っています」
ポイントは長年培った「強みの再認識」だといいます。

日本経済新聞社 中村信平記者:
「従来からやっていたカセットボンベの可能性を突き詰めていった結果、想像していなかったような新しい商品が生まれました。クラウドファンディングで一般消費者からの評価も得られています。カセットボンベを使った、これまでにない新しい消費者へのニーズが出てくるのではないでしょうか」