だって、名古屋人だもの。【愛知・岐阜】食べておきたい、あんこスイーツ
あんこの聖地・東海エリア。喫茶店の王道「小倉トースト」をはじめ、どら焼き、あんまき、おはぎなど多彩な“あんこスイーツ”は、この地方の人達だけでなく、全国の甘党たちの心を魅了してきました。心を和ませる、素朴な甘みと香り。新生活で何かと忙しくなる前に、おいしいあんこスイーツで糖分チャージをしておきましょう。
“小倉トースト”で地域活性化!
多彩なあんこメニューが揃う喫茶店
あんこ王国・名古屋を代表する、人気メニュー「小倉トースト」。そんな小倉トーストの新作を週替わりで展開、さらにあんこカフェラテ、あんこパフェなど多彩なあんこメニューで人々を魅了する喫茶店が名古屋・大曽根にありました。
その“はじまり”のルーツを探った先に見えてきたのは、大曽根の地域活性化を目指す、店長・高野仁美さんの熱い想い。小倉トースト普及委員会委員長を務め、さらに日本あんこ協会認定・あんバサダーとしてあんこの普及に尽力。そんな小倉トーストの美味しい食べ方を知り尽くした高野さんが営む、『喫茶はじまり』が発信するあんこの魅力と新たな可能性を取材しました。
メロンからマンゴーまで!
個性豊かなあんこが並ぶ
『喫茶はじまり』があるのは、名古屋市北区の大曽根駅西にある「大曽根商店街(オズモール)」と「大曽根本通商店街(オゾンアベニュー)」が一続きとなったエリア。
元々は和菓子屋だったという店舗を改装したという店内は、奥に広く、3階には猫カフェ、1階奥にはレンタルキッチンなど、『喫茶はじまり』以外の店舗が複数入っています。
自宅でもあんこスイーツを楽しんでほしいという想いから、店内ではテイクアウト用のあんこ(100g/300円)も販売。あんこは同地区にある『舘林製餡』から入荷、店内で販売しているメニューにも『舘林製餡』のあんこが使用されています。
メロン、マンゴー、いちご、コーヒー、モンブランなど種類はなんと約30種類!気分によって、店頭に置くラインアップを変えているといいます。
粒あんとこしあんをWで堪能!
“あいがけ”の小倉トースト
小倉トーストのメニューは、「小倉トースト(粒あん)」(550円)やバニラアイスにラム酒を加えた赤練りをトッピングした「あんモンブラントースト(バニラアイス・ラムあん)」(680円)など、常に5種類で展開。
今回は、粒あんとこしあんの“あいがけ”が楽しめる「小倉トースト(あいがけ)」(600円)をピックアップしました。
このようなメニューを注文する際、粒あん派とこしあん派に分かれがちなあんこ。高野さん曰く、「じゃあ、両方のせれたらいいな」という気持ちから生まれたのが、この“あいがけ”の小倉トーストなのだそう。
こしあんは、「赤練り」、粒あんは、「蜜漬けあんこ」を使用。通常の粒あんは砂糖と小豆を一緒に炊いて作られるそうですが、蜜漬けあんこはシロップに漬け込み作られたもの。そのため、通常の粒あんより、糖度が低く、さっぱりした口当たりとなっています。
蜜漬けあんこは、「あんこカフェラテ」(590円)にも使用。実はこのカフェラテ、底に蜜漬けあんこがたっぷりイン。瑞々しい口当たりとのどごしの良さから同あんこを選んだそう。しかし、なぜカフェラテにあんこを入れようと思ったのでしょうか。
高野さん曰く、昔ながらの名古屋の喫茶店では、粒あんなど小豆の入ったコーヒーを提供しているお店が一部あったのだそう。“あんこのお店”として、その文化を取り入れたいと思い、カフェラテの他、コーヒーにあんこをいれるスタイルで展開しているといいます。
また、コーヒーにつく“豆菓子”ポジションとして、小皿の赤練りを提供。あんこを舐めながら、その余韻を名古屋の昔ながらのコクのあるコーヒーで流し込む、そんな楽しみ方がオススメなのだそう。
そんな赤練りを砂糖の代わりにドリンクに溶かして味わうお客さんもいるそうで、「“コーヒーはブラック派だったのに、このお店に来てから、あんこを入れるのが普通になってしまった、危ない”と言われることもあります(笑)」と高野さんは明かしました。
ちなみに、小鉢の赤練りはプラス100円で追加注文をすることが可能。“追いあんこ”として、自分好みの甘さにドリンクの味などを調整することもできます。
バラエティ豊かなメニューで体感!
“あんこ選び”へのこだわり
「あんこ玉スムージ」(650円)や「生チョコあんこの羊羹」(500円)など、新感覚のあんこメニューも魅力的な『喫茶はじまり』。
メニューによって合わせるあんこの味わいや仕様にもこだわっており、パフェには赤練りのこしあん、ぜんざいには砂糖で炊いた粒あん、カスタードプリンなど洋菓子系には蜜漬けの粒あんを使用しているといいます。
そんなさまざまな食材とあんこのマリアージュを存分に楽しめるのが、「今週の小倉トースト」(600円)。オープン時に“毎週新作を発表します!”と宣言したことから、これまで提供してきたレシピはすでに60種類を突破!週替わりの小倉トーストはお客さんからも人気を集めており、今年1月には「小倉トースト総選挙」を実施。
取材時には、見事1位に輝いた「春を待つモアイ像の小倉トースト」の特別再販が行われていました。ちなみにこのモアイ像、あんこが柔らかいため、高野さんが1個ずつあんこをナイフで削り、手作りしているというこだわりも。
実は同店をオープンする前、名古屋市瑞穂区にあるパンメーカー「永楽堂」に勤務していた高野さん。業務用のパンメーカーだったことから、在籍時には喫茶店やレストランから意見を聞き取り、お店の人が使いやすいパンの商品開発に携わっていたそう。
そんな経緯から、『喫茶はじまり』では、「永楽堂」時代に高野さんが商品開発に携わった食パンを使用。「もし自分がお店をやるなら、こういうパンがあったらやりやすいなと思いながら作っていたものなので、今、自分で使って答えあわせをしています」と、高野さんは笑顔で話します。
通常、米粉パンにはうるち米などが使用されますが、こちらの食パンは餅米粉を使用。もっちりとした食感で、焼き上がりの香りは高野さん曰く、「ちょっとおせんべいっぽい、お餅を焼いた時のような香り」。餅米粉の風味と相まって、“おまんじゅう”のような感覚で小倉トーストを味わえるといいます。
実はカレー屋の予定だった!?
“はじまり”に込めた街づくりへの思い
「すごくカレーが好きなので、本当はカレーとスパイス料理の店をやるつもりだったんです」と、お店の意外な“はじまり”を教えてくれた高野さん。オープンまでの経緯を取材していくと、そこには地域活性化への熱い想いがありました。
大学時代から、地域活性化や街づくりのなどの活動に興味があったという高野さん。パンメーカーに就職したキッカケについても、「(街づくりについて)どういうアプローチがあるかなって思ったときに、やっぱり喫茶店は子供の頃から馴染みがありました。“名古屋の喫茶店”は、ただコーヒー飲む飲食店というより、“地域のコミュニティ”としての働きがあるとすごく感じていて、名古屋の喫茶店文化を街づくりにもっと生かせるような方法を考えたいな、というところから、喫茶店を支援する側(永楽堂)の仕事に就きました」と振り返ります。
就職後、コロナ禍には、喫茶店支援を目的とするプロジェクト「小倉トースト100変化」を発案。同業をはじめ、さまざまな喫茶店や街の人々を巻き込んだプロジェクトは大きな反響を集めました。「(「小倉トースト100変化」を経て)メーカーの立場からやれることは、一通りやりきったと感じました。それで今度は、自分もお店側にまわろうかなと思ったんです」とオープンのキッカケを明かしました。
「この大曽根の商店街は地元なんですけど、少しずつ寂れてきちゃっている。この商店街が再び盛り上がったときに、あのお店が始まりだったよねって言われたくて、『喫茶はじまり』という名前を名付けたんです」と店名の由来を教えてくれた高野さん。
「小倉トースト100変化」の活動を機に、あんこや小倉トーストに対する知識も深かったことから、お店ではさまざまな“あんこメニュー”を発信。その発信が多くの人々の関心を集め、“あんこのお店”としてお店の存在が広まったそう。
そんな状況に嬉しさを見せる高野さんですが、実は彼女がやりたかったのは「カレーとスパイス料理のお店」。「カレーは5種類展開しています。1種類は季節のカレーとしてずっと提供していて、あとは日替わりで4種類です」と、当初予定していた『喫茶はじまり』の主力メニューについて教えてくれました。
地域活性化に向けて、自身のお店で動きだした高野さん。お酒とあんこの相性も抜群であることから、今後の目標について「北海道の“シメパフェ”、沖縄の“シメステーキ”のように、小倉トーストを名古屋のシメにしたい」と話します。そんな思いから、喫茶店には珍しく夜21時までお店を営業、「パフェ&日本酒セット」(800円)の提供や近隣の酒蔵とコラボしたイベントなども開催しているといいます。
地域活性化の“はじまり”として、『喫茶はじまり』を起点に次々と進化を遂げていく、名古屋のあんこ文化。そんなあんこの魅力について、高野さんは「子供からご年配の方まで、幅広い人々が食べやすい味。パン、スイーツ、和菓子、洋菓子までさまざまな形で味わえることが一番魅力だと思うし、みんなに愛される理由だと思います」と語りました。
撮影・取材・文/山田有真
■店舗情報■
喫茶はじまり
電話番号/なし
住所/名古屋市北区大曽根2-9-57
営業時間/10:00~21:00※日曜10:00~17:00
定休日/水曜
駐車場/なし(近隣にコインPあり)
https://kissa-machidukuri.com/
粒あんの食感と甘みを堪能
“手仕事”光る伝統の銘菓
名古屋市緑区鳴海町。東海道五十三次、40番目の宿場町「鳴海宿」として栄え、その街道沿いに160年以上店を構えているのが、『御菓子司 菊屋茂富』。江戸時代から続く老舗です。
看板商品は、「ふくさやき」(140円)。どら焼きのような生地で、粒あんを包んだ和菓子です。生地の材料は、小麦粉・卵・砂糖のみ。小判型に生地を鉄板に伸ばし、キツネ色になったら素手でひっくり返します。5代目店主・深谷則芳さんによると、この方法をとることで、生地がかたくならず、しっとり仕上がるといいます。
火が通ったら、北海道産あずきを炊いた粒あんをのせ、手で巻いていきます。店主・深谷さんの“手仕事”が光る看板和菓子です。
深谷さん曰く、「ちょっと粒の形が残るようにしている」という粒あん。あずきの香りと甘み、そして食感が残る粒あんを、もっちりと香ばしい焼き皮が包み込んでいます。
4月末まで販売しているという、冬の限定商品「利休饅頭」(140円)もオススメ。こしあんを丸めたあん玉を、溶かした黒糖のようかんでコーティングした、まるで“チョコレートフォンデュ”のような作り方で仕上げたユニークなひと品です。こしあんの甘さが口いっぱいに広がり、トッピングされたケシの香ばしさがアクセントとなっています。
動画では、半田市や安城市などで味わえる、いちご大福や鬼まんじゅう、クロワッサンどら焼きなどさまざまな和菓子を紹介。練り切りなど、季節を感じる美しい“職人技”にも注目を。
■番組情報■
東海テレビ「スイッチ!」
和菓子な敦士
2025年1月28日放送
素朴な甘みともち米が相性抜群!
抹茶と味わう“おはぎモーニング”
岐阜県関市にある『濃州関所茶屋』。広々とした座敷には、大きな窓から爽やかな日差しが差し込み、訪れる人々を穏やかな和の雰囲気で包み込みます。
そんなゆったりとした時間が流れる茶屋で味わえるのが、「おはぎモーニング」(ドリンク代のみ/抹茶700円)。2種類のおはぎと、“箸休め”にぴったりの漬物がセットになったモーニングです。
餡子は優しい甘さで、つぶつぶとした食感を感じられるもち米と相性抜群。きなこのおはぎにも、もち米だけなくたっぷりの餡子が入っています。
飲み物は甘いおはぎに合う、抹茶がいち押し。サービスでほうじ茶がついてくる心遣いも嬉しいポイントです。
東海北陸道・関ICから、車で約10分の場所にある『濃州関所茶屋』。早朝出発したドライブ中に朝食スポットとして立ち寄って、おはぎでお腹を満たし、餡子&きなこで糖分をチャージするのも良いかもしれません。
観光施設としての顔もある同店。動画では、店頭に並ぶ郷土の特産・名産品などの紹介もしています。
■番組情報■
メ~テレ「ドデスカ!」
東海3県・モーニングにメ~ロメロ!「あんこときなこ モチモチおはぎモーニング」
2024年1月11日放送
甘さの秘密は“ほのかな塩味”
まるで和菓子のような「あんぱん」
パリの街並みを思わせる雰囲気が漂う『le suprême.栄生本店』。店内には、所狭しとパンが並び、他とはひと味違った個性的なパンが目を引きます。
スタッフのオススメNo.1は、「あんぱん」(173円)。シェフの実家が和菓子屋ということから、あんこは和菓子で使用しているレシピを起用。砂糖は通常のあんこより半分の量で調整しており、塩を少量加えることで、甘さを控えた口当たりに仕上げています。
お客さんからの人気も高く、平日は多い時で1日100個、休日には150個ほど売れるほど。
あっさりとした上品な味わいで、まるで和菓子のようなあんぱん。ほのかな塩味があんこの甘みを引き立たせ、ひとつ食べれば、その人気に納得するおいしさです。
動画では、名古屋の八丁味噌とネギをたっぷりのせた「ねぎ味噌ベーコン」(249円)や、自家製の発酵種を使用したドイツパン「ロッゲンミッシュブロート」(648円)、4種類のナッツの食感と味を楽しめる「キャラメルサレ」(270円)、青唐辛子の辛さとチーズのまろやかさがマッチした「青唐辛子のフーガス」(281円)など、あんぱんに並ぶ、スタッフオススメのパンが続々と登場!
あんこがおいしい「あんぱん」と一緒に食べてみたい、パン選びの参考にしてみては。
■番組情報■
テレビ愛知「パンを訪ねて三千里」
「le suprême.栄生」後編
2021年2月19日放送