人の動きまでリアルに再現する技に釘づけ！『動く戦車プラモデル』　後編

2021年02月04日

車やプラモデル、カメラなど、趣味の世界を楽しむ大人たちに密着してその魅力を調査する『極上ライフおとなの秘密基地』。2016年～2018年までテレビ愛知で放送され、現在はLocipoでアーカイブを見ることができる。

今回の秘密基地の主は、動かないはずの戦車プラモデルを動くように改造する、三重県の男性に密着。戦車だけでなく人まで動かせるようにするという、驚きのテクニックに釘付けとなる。前編はこちら

少年の頃からラジコンが大好きだった山本明彦さん。ラジコン飛行機やラジコンボートなどでよく遊んでいたそうだ。20代のはじめにプラモデルを動かすようになり、最初に手がけたのはスズキの「ジムニー」という車のプラモデル。一番最初に買った愛車のプラモデルを動かしてみたい、そんな思いから独学で動くプラモデル作りを研究したそうだ。さらに、子供の頃から好きだった戦車も動かしたくなり、コツコツと腕を磨いてきた。

ある日山本さんが訪れたのは、静岡市のツインメッセ静岡で開催された第五十六回静岡ホビーショー。全国のモデラー達が自慢の作品を持ち寄る、日本屈指のプラモデルイベントで毎年およそ7万人の人たちで賑わっている。

山本さんが所属している可動戦車模型愛好会は、動く戦車プラモデルを愛する仲間で構成された全国規模のクラブで、ホビーショーの中でも毎年大人気なのだ。

山本さんは、自身の戦車を後ろで隠すように操縦している。理由を聞くと、動かしてる人がわからないようにしたほうが不思議感が出るため、あえて送信機を隠してるのだとか。戦車が自ら動いているように見せる、山本さんのこだわりだ。

子供も大人も、動く戦車プラモデルに釘付け。熱心に質問をするマニアは、「すごいの一言。サスペンションとか自作で金属を切り出していて、レベルが違う」と興奮気味に話す。見る人を驚かせたい、山本さんの制作意欲の原点はそこにある。

ホビーショーの後、「ドイツの18トン重ハーフトラック『ファモ』はラジコン化してあって走るけれど、ひと工夫して運転席のところへ人を乗せて、実際に運転しているようなふうに見せたられたらなぁと思って」と新たな作業に取り掛かった山本さん。

さらに、「人の存在ってすごく大きい、人が乗っているのと乗っていないのとでは全然雰囲気が違うからぜひ人を乗せてみたい」とリアリティを増す仕掛けを作るようだ。

ただ人を配置するだけでなく、なんと動きまでつけることでよりリアルな作品になる。以前手がけた戦車のエンジンをかける兵士を見ると、腕はスムーズに動き上半身も微妙に揺れている。

作り方はフィギュアのキットを使い、そこからいくつかのパーツを組み合わせるそうだ。「キットのままだと全く動かないので、関節の部分を切り離して動くようにしていく」と作業し始める山本さん。肘の関節に細い穴を開け、そこに真ちゅうの軸を通して動くようにする。

さらに「ハンドルを動かすには、手首も動かないとうまく動かないので、次は手首を確保していきたいと思う」と続ける。手芸用の黒い糸を通すと、手首の関節が自由に動くようになるのだとか。

手首・首・腕の順番で糸をつなぐことで、手首の動きはスムーズになる。2体のフィギュアを組み合わせてできた、肩・肘・手首が動く兵士。最後に色を塗り、動く兵士が完成した。いよいよトラックを運転する。

前輪を動かすために使うサーボモーターの動きを利用して、兵士が運転しているように見せるのだ。釣り糸を通した自作のパーツをサーボモーターにセットすると、サーボモーターの動きに合わせて、釣り糸の先端が前に飛び出すような形になる。

続いて、ハンドルとハンドルにつける軸を運転席にセットする。軸が回転するとハンドルが回るようなり、さらに先ほどサーボモーターにつないだ釣り糸の先端をハンドルの軸に接続すると、前輪とハンドルの動きがリンクするのだ。こうして、前輪の動きに合わせてハンドルが回るようになる。

「先ほど色を塗った人形を乗せて行く。思っていたことが形になる瞬間なので、ちゃんと動いてくれるんだろうかと思って、ちょっとドキドキする」と山本さん、少し緊張気味のようだ。

本物さながらの動きをする「ファモ」と運転する兵士に対して、「まあまあいいと思う。これだけのことをするためにあんな苦労したんだけどね」「ハンドル切ってるなっていうのがわかっていいと思う」と満足気な山本さん。

飾って見ているだけじゃ物足りない。動くからこそ心が踊る。そんな動くプラモデルの世界に魅了された山本さんである。