
“台風の卵”発生か?梅雨入り早々大雨の可能性も 台風1号が遅れると年間発生数は少なくなるの?5月中に発生しなかったのは9年ぶり【気象予報士解説】

6月に入りましたが、ことしはまだ台風がひとつも発生していません。一般的に台風の発生は8月をピークに、7月から10月ごろまで多い状態が続きます。
【画像で見る】“台風の卵”発生か? 日本の南の海上が騒がしくなってきた… 最新の雨シミュレーション
ただ、その他の月も少ないながらも発生しています。
5月までに台風が発生しなかったのは、統計が始まった1951年から去年までの74年間で6回しかなく(下記のデータ参照)、ことしは7回目となり、2016年以来9年ぶりとなります。
<台風1号の発生遅い順(日本時間)と年間の発生数>※去年までのデータ
①1998年 7月9日(午後3時):16個
②2016年 7月3日(午前9時):26個
③1973年 7月2日(午前3時):21個
④1983年 6月25日(午後3時):23個
⑤1952年 6月10日(午前3時):27個
⑥1984年 6月9日(午後3時):27個
⑦2024年 5月25日(午前3時):26個
台風1号の発生時期が遅くなった年は、年間の発生数は少なくなるのでしょうか?
年間の台風発生数は…平均25.1個
データを見る限りでは、あまり関係はありません。台風の発生が遅かった、2016年、1952年、1984年、2024年のように平年(年間発生数25.1個)以上に、発生数が多くなった年もあるため、ことしも油断はできません。
では、なぜことしは台風1号がまだ発生していないのでしょうか?
台風が発生するのは、高い海面水温だけでなく「モンスーントラフ」など積乱雲が渦を巻いて熱帯低気圧が発生するなど、いくつか条件があります。
ことしは、台風が発生することが多いフィリピン沖の海面水温は高いものの、対流活動は不活発の状態が続いていました。
しかし6日現在、南の海上が少し騒がしくなってきています。フィリピンの東海上では雲がまとまりつつあって、すでに”低圧部”が現れました。
“低圧部”とは、中心がはっきりしない低気圧のことで、今後、中心がはっきりすれば、台風の卵=熱帯低気圧として解析されます。
台風まで発達するかは、現段階ではわかりませんが、アメリカ海洋大気庁やヨーロッパ中期予報センターの予測モデルでは、早くも台風とみられる”渦”が予測されるようになりました。
日本のスーパーコンピュータのシミュレーションでは、台風の明らかな渦は予想されていませんが、大量の湿った空気を送り込み日本列島で大雨を予想しています。
まだ予測にブレはあるものの、ことしは梅雨入り早々大雨になるおそれも考えておいた方がよさそうです。
では、ことしの夏、台風はどうなる見込みなのか、気象庁の3か月予報の資料を見てみます。
例年より大雨になるおそれも?
ことし6月から8月にかけての気圧配置の特徴を示した資料によると、フィリピン沖の海面水温が平年より高く、対流活動が活発化するため、積乱雲の発生が多くなる見込みです。この積乱雲の塊が、台風にまで発達する可能性も十分にあり得ます。
また、日本付近は、南からの湿った空気が流れ込みやすくなる見込みです。台風の直接的な影響も心配ですが、梅雨前線や秋雨前線が日本付近にかかる時季には、台風から暖かく湿った空気が流れ込み、前線を刺激し、大雨になるおそれもあります。
雨の季節に向けて、早めの備えをしておくことが大事です。
【気象予報士・桜沢信司】