
人手不足ニッポンの救世主か…現地は就職難の『インド人材』に企業等が熱視線 受け入れのため多文化対応も


人手不足に悩む日本の中小企業が今、インド人材の採用に力を入れています。名古屋の中小企業はインドまで直接出向いてリクルート活動を行うなど、人材獲得競争が激しさを増しています。
■インド人材に“熱視線” 4人を受け入れた愛知の会社
5月12日、中部国際空港にインド人4人が降り立ちました。出迎えたのは、愛知県春日井市に本社を置く、エレベーターなどの工事を手がける会社「トーヨーテクノ」の社長です。 日本人の採用が厳しい中、4人のインド人材の受け入れを決めました。

トーヨーテクノの松尾明展社長: 「当社は中小企業で、しかも建設業、なかなか人出不足の状況が続いていまして」 到着したばかりのインド人全員から、「働くチャンスを頂き、ありがとうございます」などと書かれた手紙が松尾社長へ手渡されました。 松尾社長: 「メッセージカード?一生懸命書いたね。字うまい、きれいに書けてる。ありがとう、頑張っていこうね。泣けてきちゃったよ…」

社長とインド人たちをマッチングしたのは、名古屋市昭和区の人材会社「アイティップス」です。 インド南部・バンガロール市に自前の職業訓練校をもち、「建設」分野の特定技能を身に着けさせ、日本の工事現場などに送り出しています。

いったいなぜ今、インドなのでしょうか。 アイティップスのクマール・ラトネッシュ社長: 「(日本の)自治体がインドに来て『人材を確保したい』と動き始めているのが今年。そういう意味だと、インドは勢いが来ている時期なんだろうなと思うんですけど」 インドの人口は14億6000万人を超え、2023年に中国を抜いて世界一となりました。

しかし、国内の雇用創出が追い付かず、インド国家統計局によると、2024年7-9月期の若者の失業率は15%を超えています。 人出不足のニッポンと就職難のインドで、まさにWin-Win、“渡りに舟”の状態です。 日本に住むインド人は5万人あまりとまだ多くありませんが、愛知県が2025年3月に開いた「インド人材活用セミナー」には多くの中小企業経営者らが参加するなど、今、インド人材に熱い視線が注がれています。
■「世界最難関」大学出身者も…文化の違い受け入れのため“工夫”凝らす
名古屋市緑区の「高砂電気工業」は、バルブやポンプなどを手掛ける従業員250人ほどの中小企業です。 ここで働くインド人のサビル・タルワラさん(24)は、”世界最難関”とも言われ合格率は2%未満という「インド工科大学」を卒業し、2023年に高砂電気工業に入社しました。持ち前の計算力で、設計部門のリーダーを任されています。

高砂電気工業では、サビルさんも含め4人のインド人が働いていて、いずれも「エンジニア採用」です。まだまだ、日本の”ものづくり”にリスペクトがあるようです。 第二海外戦略室リーダーのシャラス・チャンドラー・ヴーナさん: 「レベル的、文化的には、日本がちょっとインドより上だなって。日本で働けば、自分のスキルアップがもっと良い感じにできるような認識を、インド人は持っている」

モチベーション高く働くインド人たちですが、文化の違いは様々で、会社側も受け入れにあたって工夫を施しました。 ムスリムは1日5回のお祈りが必須です。礼拝中はほかの社員は「立ち入り禁止」で、プライバシーを確保しています。

高砂ホールディングスの人事チーフ: 「ムスリムの方も何名かいらっしゃるので。簡易なパーテーションを用意させていただいて、基本的にはお昼の休憩の時に仕切りをして」 また、宗教上の理由で肉を食べない人向けのランチとして、「肉なし弁当」も会社が用意しました。

高砂ホールディングスの人事チーフ: 「ムスリムはどうしてこういうお祈りをするのかとか、みんなで研修したりしまして。礼拝場所などは簡易で用意できますので、あとはどれだけ日本人側が受け入れていくかというところが大事なポイントかなと思います。非常にダイバーシティ(多様性)といったところに目が向く社員が多くなったかなと思います」
■2枠に“175人”応募 どうやってインド人材を採用?
高砂電気工業ではインド人材を採用するために、社長自らインド現地の大学などでプレゼンし、日本の“ものづくり”について熱弁しました。すると、インド人からSNSで応募が相次いだといいます。

高砂電気工業未来創造カンパニーの平谷治之社長: 「いろんな人がどんどん上げてくれるわけですよ、『タカサゴ来ました!』って。僕のダイレクトメール、ほとんどインド人ばっかりなんです。直接僕に送ってくるんですよ、履歴書をSNSで」 SNSを通して、名古屋の中小企業の存在が、広いインドでまたたく間に拡散し、2枠の採用に175人の応募が来たこともあるといいます。

平谷社長: 「高度経済成長のエネルギーを持っているのは、残念ながら今の日本人の学生ではなくて、貪欲に学ぼうとするインドの学生。“外向き・前向き・上向き”みたいな」 建設現場にも、ものづくり現場にも、インドは日本の救世主になるのでしょうか。