「関税」が2025年3月期決算の頻出ワード 自動車関連企業以外も「中部経済への影響」を注視

東海地方の上場企業の主要28社が、2025年3月期決算で頻繁に使った言葉は「関税」でした。中日BIZナビ編集部の大森準編集長とともに、半年前の中間決算では登場しなかった「関税」という言葉から2025年3月期決算と経済を読み解きます。
多く使われた言葉は「関税」

「事業」や「利益」など、決算で定番の表現以外で注目すべき言葉は「関税」です。こちらは決算会見に使われた単語の1万語当たりの使用回数を大きさで示した図です。「関税」は2024年3月期、24年9月中間では入っていなかったのですが、25年3月期は13.8回と頻繁に使われたんです。
関連で「アメリカ」が7.5回、「米国」と「トランプ」が3.2回と登場回数が増えました。トランプ関税は2025年4月発動でしたが、2026年3月期の業績見通しについての発表で多く使われました。

自動車関連のトランプ関税は、4月3日に輸入車に対して、5月3日にエンジンなどの主要部品に対して、それぞれ25%の追加関税が発動されました。中部地方の経済・雇用・技術を支える自動車産業は米国が主要な輸出先であり、輸入車やエンジンなどの主要部品に対する追加関税に対して、関連企業から不安視する声が多く上がりました。
先行きを見通すのが現時点では難しい

――自動車関連企業にとってはかなり衝撃的な数字だと思うのですが、各社はどのように2026年3月期の業績見通しに織り込んだのでしょうか。
トヨタグループ7社の対応です。関税の影響を織り込んだのはアイシンと豊田合成、トヨタ紡織の3社にとどまりました。トランプ政権の方針が二転三転するなど、先行きを見通すのが現時点では難しいため、26年3月期の業績見通しに関税の影響を織り込まなかった企業もあったんです。

織り込んだ3社についても、影響を見通しにくい中での手探りの試算。例えばアイシンは今後の動向に対して変わりうる仮置きの数字であるとしています。
自動車産業の中核を担うトヨタ自動車でも、トランプ関税の影響を織り込んだのは4月と5月の営業利益の減少見込み1800億円のみで、暫定的としています。やはり見通すのは難しいようです。
トヨタはトランプ関税への対応をどう考えているのでしょうか。

トヨタ自動車佐藤恒治社長:
「長期目線では現地生産、現地開発ということをしっかり進めていくということ、短期目線では需要に対して最適な対応ができるようなオペレーションの工夫をしていくこと、この組み合わせで対応していく」
関税を受けないように現地生産を強化するようです。ただ、トランプ政権の方針がコロっと変わる可能性もあります。自動車関連企業はこれからしばらく、対応に追われることになりそうです。トランプ関税の影響を懸念しているのは自動車関連企業だけではありません。
中部経済にも波及する可能性

中部電力 林 欣吾社長:
「(アメリカの関税で)輸出企業が多い中部の産業がシュリンクすると、生産量が減ります。生産量が減ると中部電力の収入が減ります。利益も減るということでありますのでダイレクトに中部電力に効く部分もありますけれども、いま注目しているのは、それによって中部経済はどうなるのか」
企業業績悪化に伴う、景気減速を懸念

東海東京インテリジェンス・ラボの細井克己シニアアナリストは「企業業績の悪化に伴う景気減速が一番懸念される。景気が減速すれば、財布のひもは固くなり、消費マインドは冷え込んでいくだろう」と指摘しています。モノが売れなくなれば、企業業績はさらに悪化し、結果、消費者の給料は上がらずにさらに消費が落ち込むという負のスパイラルに入る可能性もあります。
われわれ消費者もトランプ関税の動向を注視する必要がありそうです。
(2025年5月19日放送 中日BIZナビ共同企画「東海ビジネススコープ」より/解説:中日BIZナビ編集長・大森準さん)