メガネで脳の疲労状態を「見える化」 大阪の老舗サングラスメーカーが「ズレない技術」で実現へ

世界的なトップアスリートも認める大阪の老舗サングラスメーカーが新たに取り組むのは、「脳の状態を見える化」するプロジェクトです。世界初の試みだというのですが、一体、どんなプロジェクトなのでしょうか。

東大阪に本社を置く、サングラスメーカー「山本光学」。4代目の山本直之社長が身につけていたのは、自社ブランド「SWANS」のサングラスです。卓球で活躍した水谷隼さんや、ゴルフの石川遼選手など、トップアスリートの視界を支える業界屈指のブランド。強みは、頭にフィットする「かけ心地」です。

山本光学では、500人以上から頭の形を3Dスキャンし、スポーツなどの激しい動きに耐える形状を研究してきました。2020年からは、「スマートグラス」分野に進出。相手の話し声をテキスト化してレンズに表示したり、演劇のセリフを翻訳表示したりする製品を開発しました。
成長が期待されるスマートグラス市場。「ズレない」強みを生かして打って出ます。
視線から脳の疲労度合いが分かる

ソフト面を強化するため手を組んだのが、大阪大学発のスタートアップ「ニューラルポート」。視線から、「脳の状態」が分かるといいます。
ニューラルポート CEO 島藤 安奈さん:
「76%ですね。平均が44%なので、アスリートの試合前ぐらいの疲労感です。視線の動き、瞬きなどから“脳の疲労”を推定します」

VRゴーグルの映像を見せてもらうと、ジャンルの異なる2枚の絵画が並んでいました。2枚を見比べる視線の順番や見ている持続時間から、脳の疲労度合いが分かるんだそう。視線から「脳の状態」を見える化するのは、世界初の試みとなります。

山本光学 山本社長:
「目と脳のつながりは、まだまだ解析されていないところがたくさんあります。そういう意味ではアイウェアを超えて、目から入る情報をいかに分析してどう役立てるかですね」
フットサルプレー中にも計測可能に

計測用のVRゴーグルは、山本光学が開発したスマートグラスに置き換えて小型・軽量化。ズレないスマートグラスの導入で、フットサルプレー中の脳の疲労度合いの測定など、激しい運動中でも計測が可能になりました。

さらに、スマートグラス内側に赤外線センサーを追加。瞳孔の収縮も検知するなど計測するデータを増やしました。これをプロと一般のドライバーに装着して瞳孔の状態を調べます。

プロのドライバーの瞳孔の大きさはほぼ一定ですが、一般ドライバーは大きな変化を繰り返しており、ストレスのかかった緊張状態にあることが分かりました。フィットしてズレないスマートグラスが、精緻なデータ計測を可能にしました。

山本光学 山本社長:
「今はまだデータどりの段階ですが、それをフィードバックして、通信機能を持たせて『きょうは運転をやめておきなさい』とかアドバイスするなど、可能性はあるのかな、と」
スポーツ以外にも、工事現場や医療の分野など、ストレスの多い環境で事故を防ぐのに役立てる考えです。

日本経済新聞社 漆間 泰志東大阪支局長:
「町工場は東大阪に多く、技術はありますが、それをどう新事業につなげるかに対する苦手意識が強いです。逆に研究能力が大学発スタートアップは高いので、中小企業には足りないところを補えるのではないかと思います」