【中小企業の生き残り策】ライバルや異業種…生き残りのカギは「連携」 専門家「第4の経営資源生かせ」

中小企業の経営環境は、今、厳しい状況に置かれています。民間の信用調査会社「帝国データバンク」の2024年の調査で、東海3県の倒産件数は895件と、11年ぶりに高い水準となりました。この状況の中、中小企業は生き残りや事業の継承のための試行錯誤を重ねています。中日BIZナビ編集部の市川勘太郎記者に中小企業の話を聞きました。
企業倒産件数は895件、11年ぶりに高い水準に

民間の信用調査会社「帝国データバンク」の2024年の調査で、東海3県の倒産件数は895件でした。これは、11年ぶりの高水準です。厳しい環境の中、中小企業が生き残りをかけて、「連携」を強化しています。

名古屋市に本社を置く、中小企業「船橋」です。カッパやエプロンなど、防水機能を高めた商品を製造・販売しています。発注できる最小単位は10枚から。対応できる商品は200種類以上あります。ただ、製造するうえで課題を抱えていました。

船橋 管理課 成瀬友香さん:
「今までは背中を見て覚えてほしい、という形で進めていたので、特に紙での記録は残しておらず、久しぶりに注文が来た商品は確認がうまくいきませんでした。最後の検品の時点で『これ前の商品と違う形じゃない?』と、問題がちらほら発生していました」

船橋では、愛知県の支援を受けて、若手社員が製造手順を1枚の紙にまとめる取り組みを始めました。ビニール製エプロンの手順書を見せてもらうと、生地の折り方やひもを通す穴の補強の仕方まで、簡潔にまとめられています。

岐阜大学とも連携し、学生インターンを採用。動画で手順をさらにわかりやすくしています。船橋では、コロナ禍に医療用の防護ガウンを大量生産しましたが、このときもトヨタ自動車と連携して、効率のいい生産方法を取り入れていました。
ライバル企業との連携で、生き残りを模索する企業

中には、ライバル企業との連携で生き残りを模索する企業もあります。
ウール生地の生産販売を手がける三星グループです。本社を置く岐阜県羽島市は、一宮市などとともに「尾州」と呼ばれ、明治時代から毛織物が盛んな地域です。しかし、コロナ禍でウールのコートやスーツの需要が激減。売り上げは産地全体で、4割まで落ち込みました。この苦境を乗り切ろうと、産地ではライバル企業同士が手を取りあいました。

岩田社長らは2021年から、ライバル社とともに工場見学などを体験できる「ひつじサミット尾州」を開催。作り手同士も交流し、ライバル企業の工場を訪れることもあります。

三星グループ岩田真吾社長:
「技術が盗まれちゃうんじゃないかみたいな心配もありましたが、むしろその逆ですね。工場を見に来た同業者が『あそこ難しいよね、うちもこういうふうにやったらうまくいったよ』みたいな、互いに教えあう文化が生まれて、ものづくりだけじゃなく、DXとか個社では難しいことをみんなで一緒にやろうという雰囲気に進化してきました」

さらに雇用にもつながりました。新しい担い手の1人、上川歩さんです。ひつじサミットを機に三星グループに入社しました。
三星グループ上川歩さん:
「替えのない織機を使って仕事をしているのは、すごく楽しいし、貴重な体験をしているなと思います」

ここまで2つの中小企業の連携を紹介してきましたが、識者はどう評価しているのでしょうか。
中小企業の連携について経営学者の坂本光司さんは「外部の力は、『ヒト、モノ、カネ』『技術』『情報』に次ぐ、第4の経営資源と言える」と分析。さらに「連携は、限られた経営資源の中で、限界を突破する方法で生き残りの手法」と評価していました。
思いもしないところとの連携が、中小企業の生き残りにつながるかもしれませんね。
(中日BIZナビ共同企画「東海ビジネススコープ」)