「ガチ中華」を支えるのは「栃木産」の本場中国野菜 中国式の保温ハウス栽培に秘密

日本に住む中国人の数は2024年末で約87万人。ふるさとの中国料理を再現するには、日本では入手困難な野菜や香辛料が必要です。そこに新たなビジネスが生まれています。

街で見つけたのは、中国・新疆(しんきょう)の料理。こちらは中国南部・湖南の料理です。これまでは日本にはなかった本場の中国料理、通称「ガチ中華」が近年増えています。
ガチ中華の1つ、四川料理の専門店。人気料理は「ザリガニのニンニク煮込み」。日本では手に入りづらい、ザリガニの料理を味わえます。
この本場の中国料理、材料は栃木県から入荷していて、店のスタッフは「新鮮でおいしい」と話します。
9年前に農業をスタート、現在の売上高は2億5000万円(2024年)

店に中国野菜を供給していたのが、栃木市にある施設「北海農場」。見慣れないハウスですが、中国から導入した“中国式の保温ハウス”といいます。
社長を務めるのが中国出身のハンさん。1998年にITエンジニアとして来日し、その後、ソフトウェア会社も経営。農業を始めたのは9年前、いまでは2億5000万円を売り上げています。

合計5ヘクタールの農地を借りており、後継者不足に悩む地域にとって、ありがたい存在です。中には日本のものより3〜4倍も大きな中国唐辛子も。ハン社長は「ガチ中華の店が多いので注文がいっぱい!」と笑顔で話します。中国料理に欠かせない空芯菜やパクチーをはじめ、主に炒め物に使われる中国南部の珍しい野菜まで育てています。

北海農場 ハン社長:
「『茎レタス』はレタスの一種で、珍しいもの。この茎を食べます。皮を剥いてから」
在日中国人を中心に2万人以上が利用する販路も

年間約30種類の野菜をつくり、関東を中心に100を超える中国料理店に出荷しています。ハンさんはさらに、2024年から個人向けECサイトも開始。在日中国人を中心に2万人以上が利用する販路もつくりました。そんなハンさんの販売力に、地元の農家も注目し始めました。

2024年の秋から、永田ファームではハンさんが育てる野菜と一緒に、キャベツを首都圏の中国料理店にも配送しています。ハンさんのECサイトではコメも販売。個人宅向けの需要を開拓するのです。

永田ファーム 永田誉さん:
「販路や売り方に工夫ができない農家が多いが、北海農場はクリアしていて理想の形ですね。勉強になるし、すごく参考になります」
在日中国人の新市場が広がる

在日中国人の新市場が広がると、ハンさんとタッグを組む農家も増えているのです。
日本経済新聞社 編集 政策報道ユニット
覧具雄人 部次長:
「2024年末で在留外国人は376万人いますが、国の想定よりさらに2倍のペースで増えており、いまのままいくと2050年には1000万人くらいになります。そうなると、外国人は消費者としても存在が大きくなってくる。その人たちを対象にしたビジネスチャンスが増えると思います」
事実、国内のパクチーの生産量も、この6年で倍近くに増えています。

北海農場 ハン社長:
「新鮮な(中国)野菜を、全国の皆さんに届けられるように頑張る」