
市場拡大する「メンズ美容家電」8800円の脱毛器が12万台のヒット 作ったのは従業員18人の中小企業

拡大する「メンズ美容家電」市場で、新規参入組の中小企業が存在感を示しています。中小企業ゆえの「選択と集中」「目の付けどころ」がヒット商品につながりました。
男性のムダ毛処理のニーズ高まる

大阪・堺の家電量販店。入ってすぐの一等地に、「メンズ美容家電」のコーナーがありました。いま注目されているのが「全身のムダ毛処理」です。価格を見ると、大手は4万円台、1万円台後半。そのなかで、8800円という低価格の商品が! 実はこれ、美容家電では異例ともいえる12万台のヒットを飛ばしている商品なんです。

若者の間で「ムダ毛処理」のニーズが高まっています。男性化粧品大手の「マンダム」による調査では、「興味のある美容」で、首位の「スキンケア」についで、除毛や脱毛などの「体毛ケア」を挙げた人が35%以上に。作るのは、「APIX(アピックス)」というメーカーです。

日本三大電気街の1つである大阪・日本橋。その裏手に「APIX」の本社はあります。創業1979年。従業員数18人の小さな家電メーカーですが、デザインにこだわり、ヒット商品を生み出し続けてきました。その代名詞ともいえるのが、この加湿器。「加湿器は四角い」という固定観念を覆し、累計385万台を販売する異例のヒット商品となりました。

自らデザインを手がけた田中智浩社長は「大手の場合はマスを狙って、一番大きいゾーンを狙いに行く。その真逆を中小がやっていくことでより深い層に刺さる」と話します。
ニッチ市場を狙う「APIX」のビジネス戦略

田中社長らが作るのは、ドライフード専用、レトルト食品を温める専用の調理器など、どれもニッチなニーズに応える「一芸家電」。コロナ禍の調理家電ブームが去り、次に目をつけたのが美容家電です。中でも若い男性というニッチ市場を狙いました。
田中社長:
「ムダ毛処理はZ世代の関心が高いということがあるので、低価格を実現させています」
日本経済新聞社 岸本まりみ記者:
「大手のメーカーが高価格帯で高機能のものを出していく流れの中で、機能を絞って手頃な価格で販売するというのが1つ中小の強みかと思います」
機能をそぎ落とし、広告モデルはAIにしてコストを削減

大手がAIによる学習機能や、付属のアタッチメントを充実させる中、田中社長らは価格を抑えるため、余計な機能をそぎ落とし、「滑らかなそり心地」と風呂場でも使える「防水性能」だけに特化。さらに、モデルはAIで生成し広告費を浮かせました。

田中社長:
「出してみて意外な反応もあれば、『こんなの欲しかった』っていう反応もあります。どちらにしても出さないと気付けないので、スピード感は一番重要視しています」