JR東海が目を付けたのは「サイクリスト」新幹線利用客数増加を目指し 静岡県浜名湖でレンタサイクル事業

JR東海が自転車の貸し出し拠点を新たに開設し、沿線の観光地を活性化する取り組みを始めました。新幹線の利用客を増やすことが狙いです。
静岡県の浜名湖に浮かぶ東海道線の弁天島駅近くに5月31日オープンしたのはJR東海が運営する自転車の貸し出し拠点です。拠点には、スポーツタイプの自転車や電動アシスト機能がついた自転車など約60台がそろっています。鉄道事業者のJR東海が浜名湖で自転車の貸し出しを始めた理由とは…
JR東海 営業本部地域創生グループ 清水康臣リーダー:
「東海道新幹線を含めた鉄道利用の促進というのが我々の一番のマネタイズポイントになっている。(サイクリングの)ライト層が初めていくのであれば浜名湖だよねという風に思ってもらうことがゴール」
浜名湖は東京と大阪のほぼ中間地点に位置していることから、首都圏と関西圏の両方から新幹線の利用客数の増加を目指しています。JR東海ではこれまでアニメなどとコラボして、新幹線の車内で限定コンテンツを楽しめる「推し旅」などの事業で新幹線の利用客数の増加を図ってきました。しかし、イベント期間中の効果はあるものの、持続的な利用客数の増加にはつながらないことが課題でした。
JR東海 営業本部地域創生グループ 清水康臣リーダー:
「大きな市場をターゲットにして、市場のユーザーの方々に継続的に観光地に来てもらう」

JR東海がすすめるのは弁天島を出発したあと、浜名湖の湖岸沿いを走り、舘山寺温泉に到着する約12キロメートルのコースです。
記者:
「ここからは橋の上なんですね。両脇を浜名湖に囲まれてとてもいい景色です」
コース上には自転車専用道もあり、自転車でしか見られない景色も。
記者:
「景色が変わってきました。右側には崖が、左側には浜名湖が見えています」
湖岸との距離が近いのが特徴です。
記者:
「12キロほど走ってきましたけれども、景色が次々と変わり走っていて飽きないコースでした。体力に自身のない方でもこうした電動アシスト付き自転車を使えば楽に走ることが出来そうです」

ゴール地点の舘山寺温泉にも仕掛けが。2025年4月、サイクリング事業の担当者が向かったのは、温泉街のうなぎ店です。貸し出し拠点で販売する地域クーポンへの協力について打ち合わせに来ました。サイクリングコース周辺の飲食店を中心に23店舗が地域クーポン事業に参加していて、利用者はお得に食事などを楽しめるということです。
うなぎ専門の店 志ぶき 山崎暁史代表取締役:
「すごく期待しています。鉄道を利用して来られるお客様にも舘山寺温泉を知っていただくすごくいい機会になる」

民間の鉄道会社の観光開発について専門家は…
静岡県立大学ツーリズム研究センター 大久保あかね教授:
「自治体の(観光)施策だと単年度だったり長くても3年計画というところで区切りを迎えたりする。それに対して、JR東海のような体力がある企業でなおかつ運送のチャネルを持っているところは、採算を取りながら継続的に運用できるというところが、地域の方々にとっても協力しやすいというところもあり、非常に心強いのではないかと思う」
新幹線を持つJR東海ならではの強みもあります。
静岡県立大学ツーリズム研究センター 大久保あかね教授:
「いち企業が取り組む地域振興策の中でも、JR東海は関東圏や関西圏の大きな市場に直接顧客にアクセスするネットワークを持っているので、取り組む企業としても力を持っているんじゃないかと思う。今回、日帰り旅行に焦点を当てているが、遠距離になるほど長時間の滞在が期待できるので、宿泊であったり滞在型であったりと、この先もしかしたらインバウンドにまで広がるような期待もできるのではないか」
一方でこんな指摘も…
静岡県立大学ツーリズム研究センター 大久保あかね教授:
「(コースには)起伏があまりないので走行すること事態はそれほどきつくないかなと思うが、自転車に乗りながらスマートフォンを見たり、地図を広たりができないので『ここは右・左』、『ここはまっすぐ』のような案内表示があるといいと思う」