高い相場で買ったコメは「損をしても値下げして売るしかない」コメ価格下落で苦悩する卸売業者

6月9日から15日のコメの平均小売り価格は5キロで3920円と、ようやく4000円台を割り込みました。消費者にとってはありがたいですが、コメの卸売業者は苦悩しています。

入荷したコメを倉庫に運び込んでいるのは、愛知県豊橋市にあるコメの卸売業者「東三河食糧」です。仕入れ価格について聞いてみると…
東三河食糧 渡辺社長:
「この辺の新潟県産コシヒカリなんかは、最高5万2000~3000円まで行きました。今は4万2000~3000円じゃないですか」
卸売業者間で取り引きされる価格=市中取引価格は、関東産コシヒカリの場合、ピーク時、60キロで4万8800円でした。小泉農林水産大臣が決めた備蓄米の随意契約がスタートすると価格は下がり始め、直近では3万4300円と約1万5000円下落しています。
東三河食糧 渡辺社長:
「(相場が)下がったから、これ(高い値段で仕入れたコメは)どうするのっていう話もありますよね」
相場が高い時に仕入れた在庫は、損をしてでも値下げして売るしかないと言います。
東三河食糧 渡辺社長:
「高く仕入れたものは早く売って、在庫をなくせと。うちも頑張ってやらさせてもらったが、全部の高いものが売りきれたわけではない。だって急ですもん。差損になってでも処分せざるを得ない」

また別の逆風も…
小泉農林水産大臣の発言:
「あるコメの卸売会社の営業利益は、なんと対前年比で500%ぐらいです」
小泉農林水産大臣のこの発言をきっかけに、「コメの卸売業者が価格をつり上げて、不当に利益を得ている」との批判の声が上がったのです。
東三河食糧 渡辺社長:
「もうこれはね。もう少しちゃんと調べてくださいよ、と。例年では、50億~60億くらいの売上ですが、実際の粗利で言ったら4%。前期は7%近く。うちが粗利4~5%から前期7%になったのは、コメの価格が上がったから。
最初に買ったコメ、実は安いんですよ。若干高いものを買って、ブレンドして売っても多少利益がとれたという話。電気代は上がる、袋代は上がる、いろんな経費が上がっているわけですから、実際はそんな程度しかコメって儲からないんです」

東三河食糧の経営状況について、農業経営学が専門の宮城大学、大泉一貫名誉教授に話を聞きました。
大泉一貫 宮城大学名誉教授:
「営業利益率だと、大体、コメの卸(売業者)というのは(利益率)1%前後ですよ。赤字になってるところもありますから、そうしてみると(東三河食糧の)粗利4%から7%っていうのは決して高いとは言えないので儲かってるとは言えないでしょうね」
その一方で、利益を増やしている卸売業者もあるといいます。
大泉一貫 名誉教授:
「今回、大手の卸(売業者)は、確かに増収増益なんじゃないでしょうかね。コメの価格が上がったから、結果としてそうなったということで、2024年産米は確かに大手卸(売業者)は儲かってると思いますね」

中小と大手の差は、コメ不足でより顕著になったと指摘します。
大泉一貫 名誉教授:
「基本はコメ不足なんですよ。(去年は)40万トンから45万トンくらい不足した。これは卸(売業者)が慌てた。コメが確保できないぞということで、いろんな形で集めたと。集荷競争が起きたということで、コメの値段がどんどんつり上がったと」
大泉名誉教授は、そもそもコメの取引価格を決める仕組みに問題があるといいます。
大泉一貫 名誉教授:
「価格はどこで決めるのかというと、(JAがコメ農家に支払う)概算金と(集荷業者が卸売業者に販売する)相対取引価格、それから市中取引価格しかないわけです。公正な価格形成の場がないというのが、コメの流通では1番の問題だと思っている」
その上で、必要なのは抜本的な流通改革だと話します。
大泉一貫 名誉教授:
「先物市場ができることで、公正な価格がいくらなのかが明らかになってくる。それに基づいた流通が行われる必要があるだろう。みんな悪者にしようと思えば、悪者にできるわけだが、それをウィンウィンの関係にするためには、公正な市場を作ることが1番大切なんじゃないですかね」