日産が8年ぶりに電気自動車「リーフ」をモデルチェンジ 経営危機の「救世主」となるか専門家が解説

8年ぶりモデルチェンジの電気自動車「リーフ」特徴は最大702キロの航続距離
フルモデルチェンジした日産の電気自動車「リーフ」が、日本で初披露されました。経営危機に陥っている日産の「救世主」となるのでしょうか。
電気自動車「リーフ」は再建計画の中核を担う商品

10月8日、東京で披露されたのは、8年ぶりのフルモデルチェンジとなった3代目「日産リーフ」です。ボディタイプもハッチバックからクロスオーバーSUVへと一新されました。大きな特徴はエッジの高さです。
記者:
「エッジの高さが少し変わってしまうだけで、航続距離が16キロほど落ちてしまうということです。こうした細かいデザインを車の前から後ろまで、空気抵抗を考え抜くことで、航続距離を伸ばしたということです」

航続距離は直線距離で名古屋から九州や東北まで届く最大702キロに。旧型のリーフより約250キロ、距離が伸びました。
日産自動車 磯部博樹チーフ ビークル エンジニア:
「新型リーフは、徹底的な空力性能の向上に加え、高性能バッテリーや効率化したパワートレインを搭載することで、WLTCモードで最大702キロという航続距離を達成しました」

新型リーフの価格は税込み518万円から。補助金の申請が認められれば、実質負担額は430万円程度になるということです。注文の受付は、10月17日から順次、全国の日産販売店で始まります。

経営危機に陥っている日産。その“再建”を託されたイヴァン・エスピノーサ社長が、新型リーフを「再建計画の中核を担う商品」と位置付けています。狙うのは、ガソリン車からの代替です。
新型リーフの発表について、自動車評論家の国沢光宏さんに話を聞きました。

――今回の発表に関して、国沢さんはどのようにとらえていますか。
自動車評論家 国沢光宏さん:
「電気自動車は日本ではまだまだマーケットが少ないです。これが販売されたからと言って、状況が一気に改善するなどは考えにくいと思います」
――では、どうしてこのタイミングで新型リーフを発表したのでしょうか。
「今の日産には、明るいニュースがほとんどないんですね。自動車業界にとって、新型車が出るというのは一番の“お祭り”です。そのお祭りには人が集まってくるので、日産のディーラーに来て、リーフを見て、ほかの車を買ってくれる人もいるでしょうし、そういう意味では、日産の再建策の第一歩と言っても良いかもしれません」

――その一方で、日本のマーケットに合った車を、救世主の位置付けで発表するという手もあったのではないでしょうか。
「その通りだと思います。ただ、車は開発をスタートさせてから販売まで4年ほどかかります。イヴァン・エスピノーサ社長になってからまだ時間が経っていないので、これからそういった売れ筋の車を出してくるまでには、2年など長い年月が必要となります。
それまでに、どうやって日産の元気さを、キープしていくかが舵取りの難しい部分だと思います」

――日本のマーケットに合わせた車の開発などに、着手はしないのでしょうか。
「今までの日産が厳しかったのは、そうした車の開発をしてこなかったからなんですね。ここ何年も、魅力的な新車が出てきませんでした。今、さまざまな車を仕込んでいるようですが、それが出てくるまでは1年や2年はかかるんですね。
それまでに何もニュースがないと、お客さんも来なくなってしまって会社も忘れ去られてしまうので、車を一生懸命出して、少しは元気なことを言わないと賑やかにはならない。だからこそ、『一気に体制を建て直す』と言っているんだと思います」

――国沢さんから見て、新型リーフの完成度や出来栄えについてどのように感じましたか。
「旧型のリーフは基本設計が20年ぐらい前の車だったので、正直勝負になっていなかったんですね。新型リーフは、世界の1番新しい車までは届きませんが、戦えるほどの実力があると思います。皆さんに乗っていただき『良い車だな』と感じていただけるのではないかな、と」

――今、“世界”という言葉が出ましたが、世界でのEV市場に目を向けると中国なども非常に元気な印象です。日産での戦い方、立ち位置は今後のリーフを持ってして、どう変化しそうですか。
「日本では電気自動車の先がないのではないか、という話をする人がいます。世界を見ると、2050年のカーボンニュートラルに向けて踊り場かもしれませんが、確実に伸びているんですね。
中国は最先端で、日産はそこに中国で開発した一番新しい、世界でトップを戦えるぐらいの車を上海市場でデビューさせました。それが、今はもう中国ではつくりきれないくらい売れているんですね。
日産も本気を出せば良い車をつくれると思いますが、残念ながらリーフはそれよりも前の基本設計になっています。日本は開発時間がかかるので、中国では2年でできるところを4 年前のスタートになっています。そういう意味では、もう少し時間がかかると思います」
――日本向けに出る車は、また今後さらにより良いものが発表される可能性もありそうですか。
「日産自身は良いものを出してくると思います。それが売れるかどうかは全く別の話。ただ、野球もそうですが、振らないと当たらないですよね。今まで振ることもなかったというところからすると、一歩前進したのかなと感じます」