運転手不足のバス業界の救世主となるか 愛知・豊田市のバス会社に2人の外国人ドライバーが誕生

全国各地でバスの路線廃止や減便が相次いでいます。利用者の減少も原因の一つですが、深刻なのは運転手不足です。そこで期待されているのが、日本で働く「外国人ドライバー」。数々の壁を乗り越え、バス業界の救世主となるのでしょうか?
大型路線バスのハンドルを握る男性。実は、運転手獲得のための無料体験会です。
愛知県豊田市が開催したコミュニティバス「おいでんバス」の運転体験会には、10代から70代と幅広い年代の人たちが参加しました。
「運転歴はマイクロバスが少しくらいかな。久々に運転できて感無量というか、うれしかったです」(50代の参加者)
体験会を開いた目的の一つが人材の確保です。今、バス業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。
「おいでんバス」が走る豊田市内の路線を維持するためには約180人の運転手が必要ですが、去年は2割ほど不足しました。
「今後もいかに路線バスを維持していくか。そのために担い手の運転手を確保することが大きな課題」(豊田市 交通政策課 稲吉康介 課長)
バス運転手めざし海外出身の2人が入社

「おいでんバス」は市内のバス会社3社で運行していますが、その1つ「豊栄交通」で、この春新たな動きが。
「何とか(オファーに)応えていこうと思ったときに、日本人も積極的に採用するが、さらに門戸を広げて、外国の方にも来て欲しいと」(豊栄交通 管理部 鍋田直伸さん)
不足する運転手の確保へ。白羽の矢が立ったのが「外国人ドライバー」です。
指導を受けるため教習車を点検する2人は、海外の出身です。
村上直之さん(40)はブラジル出身で12年前に来日。お父さんが日本人で、日本国籍を取得しています。
「運転が好きで、特に大型車が昔から気になっていた」(村上さん)
もう1人の新人、ベハル・アロン・ロブレラさん(39)はフィリピン出身です。
「娘たちのために、いろんなところを調べた。やっとここを見つけた」(アロンさん)
3月下旬、2人は豊栄交通に入社しました。バスの運転手になるためです。
日本で働く外国人は、去年230万人を超え、10年前の約3倍に拡大しています。
このうち愛知県で働くのは22万9627人。東京に次いで全国2番目の多さです。
言葉の違いなど数々の壁が

教習車を運転する実習を始めて11日目。まずはフィリピン出身のアロンさんが運転席に。
指導する藤田信一さんが取り出したのは、タブレット端末です。
日本語での日常会話には困らないものの、運転に関係する用語を伝わりやすくするための工夫です。
外国人ドライバーが日本でバスを運転するためには、言葉の違いを含め数々の壁があります。
「どうしても日本語能力部分で苦労がある。そこを乗り越えて、大型2種免許試験に合格しないといけないのと、お客様とのコミュニケーションをしっかり取れないといけないという、この2つの観点で悩ましかった」(豊栄交通 鍋田直伸さん)
厳しい関門を突破し、2人は今年、大型2種免許の試験に合格。正社員として採用されました。
運転実習には課題も

運転実習では、先生役のベテラン指導員、藤田さんの目が光ります。
前方からは立て続けに大型トラックが…。
アロンさん、スムーズな運転をみせましたが、藤田さんには課題が見えました。
「できるなら直線部分ですれ違った方が安全だね。もしカーブですれ違うなら速度を落として対応だね。自分で考えてやっていかないとね」(藤田さん)
お客さんを乗せるためには、安全第一です。
「乗客を幸せにする運転めざす」

2人はどんな運転手になりたいのでしょうか。
「安全運転を心がけて、頼りになるドライバーになれるように頑張ります」(村上さん)
Q.難しかったことは?
「自動車学校の教科試験。参考書が日本語しかないので、1個1個の意味を覚えて頑張りました」(アロンさん)
Q.目指すのは?
「乗客を幸せにする運転」(アロンさん)
外国人バスドライバーの誕生に、会社も次なる期待がふくらみます。
「弊社としても先駆けになってほしい。リーダー的ポジションについてもらえるのを期待している」(豊栄交通 鍋田さん)