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“リニア”到来で変わる名古屋駅~「駅西」を過去の映像で振り返る

メ~テレ
06.21(土)13:00
工事中のリニア駅(名古屋・中村区)

 東京~名古屋間を45分で結ぶというリニア中央新幹線。2027年開業予定でしたが、各地での工期の遅れが顕在化し、さらに岐阜県内でトンネル工事が原因とみられる「ため池や井戸の水位低下」や「地盤沈下」が確認され、実際の開業時期は2025年6月現在見通せなくなっています。

 一方で、名古屋駅では駅の建設が着々と進められています。リニアの名古屋駅は地下30mの場所に、現在の名古屋駅を東西にまたぐ形で幅60mにわたって造られます。その上部は、広場などとして活用されるということです。

名古屋駅「西」と「東」は大きな違い

名古屋市中村区役所が設置した銘板

 今の名古屋駅を見ると、東と西では大きな違いがあります。東がいわゆる名古屋の玄関口としてビルが林立するなど発展してきたのに対し、西はそういった風景はありません。実は、「駅西」は東側とは全く異なった歴史を持っています。

 名古屋駅の西口・太閤通口を出ると、信号の手前に名古屋市中村区役所が設置した銘板があり、そこに1964(昭和39)年の西口前の写真が載っています。

 銘板の文には、「戦後しばらくは写真のようなバラック造りのさまざまな商店が建ち並び、大いに賑わったという」とあります。

1960年代の「駅西」映像残る

1960年代の駅西の様子

 名古屋駅の西の地域は、以前は「駅裏」とも呼ばれ、戦後闇市由来の21のマーケットがひしめき合っていました。また商店以外にも旅館や遊技場などもあったようです。

 その後、1960年代の東海道新幹線の開業に伴う都市改造事業により、街路の変更や広場、道路の用地とするために約2500戸が移転しました。

 戦後の「駅西」の歩みを都市社会学の立場から調査・研究している名古屋市立大学大学院の林浩一郎准教授によると、地権が複雑だった駅西でこれほど大規模な開発が行われるのは、この都市改造事業以来だということです。

 リニア開業を前に、ふと1960年代の駅西の映像がメ~テレに残っていないか調べたところ、当時の様子がわかるものが数本残されていました。その中からいくつかを紹介したいと思います。

簡易旅館「紅屋」から出火

1963年11月28日に発生した旅館の火事の画像

 1つ目は、1963(昭和38)年11月28日に発生した旅館の火事の映像です。残された資料などによると、この日の午前、駅西の「ユタカマーケット」近くにある3階建ての簡易旅館「紅屋」から出火し全焼、近くの2棟にも延焼したということです。

 幸いけが人はいなかったようですが、映像にもあるように家財道具を運び出す人や見物人でごった返したようです。

 映像を見ると、小さな建物がひしめき合っている当時の駅西のマーケットの様子がよくわかりますし、また集まってきた人たちの様子から当時の服装や髪形などもうかがい知ることができます。人々の様子から、私は何かこの時代のこの地域の活気のようなものを感じました。

 また、消防隊員が旅館の中に入って調べているので、おそらく映像は鎮火後に撮影されたものと思われますが、それでも火災現場の近くまで我々のカメラや見物人が入っているのは少々驚きです。今では、もっと手前から規制されます。

 映像の最後に、名古屋駅から現場方向に振り込むカットがあり、これで現場が駅から近いところであることがわかります。この地区は、当時すでに改造計画の道路用地となっていて、このマーケット周辺の約30戸は、「笹島十字路」近くへ移転する話し合いが進んでいたとのことです。

 当時の住宅地図などから、この旅館の位置は今の太閤通口前の椿町線上で、それも現在工事が進められているリニアの駅のあたりと推察されます。当時の人たちは、まさか自分たちが住んでいる場所の下に巨大な地下駅ができるということは想像していなかったでしょう。

年末の特別警戒 警察官ら65人態勢で

名古屋の駅西で実施された特別警戒の様子(1963年12月)

 2つ目は、1963(昭和38)年12月29日に放送された映像で、駅西で実施された特別警戒の様子です。この特別警戒は、凶悪事件が相次いだとして12月28日午後6時から翌日の午前2時まで中村区椿町一帯を包囲するような形で実施され、警察官ら65人態勢で出入り口に置かれた10カ所の検問所で不審者への職務質問が行われました。

 数日前には女性が殺害された事件があったようで、新聞記事によると、昼間は師走の買い物客でにぎわったが、夜はこの警戒活動で重苦しい空気だったとのことです。

 また、客引きの女性たちは、機動隊員らが巡回すると裏道に隠れたり、労務者風の男性が警官にからんだりしたこともあったようです。

 映像では、中村警察署を出た警察官らが名古屋駅西口に到着し、その後駅西のマーケット街に入っていき、職務質問などをする様子とともに、夜の駅西の様子が映されています。警察官らが到着した場所は、今の太閤口前の広場辺りと推察されます。

駅西では多くの建物が取り壊されていく

駅西の建物が取り壊される様子(1963年5月)

 3つ目は、1963(昭和38)年5月15日に放送された「駅西で取り壊し進む」という映像です。上述の改造事業に伴い多くの建物が取り壊されました。

 映像の冒頭は、おそらく現在の新幹線ホームの位置辺りから撮影されたと思われますが、駅西の南部などで取り壊しが進んでいる様子が確認できます。

 また、東海道新幹線の建設中の橋脚も映っています。取り壊しが進んでいるのは、住宅地図などから当時「國際マーケット」と呼ばれた地区とその周辺と思われます。狭い路地や木造の建物、その内部の構造などがよくわかります。

現在の名古屋・駅西の様子

 さて、駅西ですが、改造事業によって街の景観は変わっていきましたが、現在でも周辺を訪れると、街区が当時と変わっていないと思われるところや、マーケットがひしめき合っていた頃を彷彿させる建物や風景が見られます。

リニア開業で駅西の今後は

「名古屋駅西タイプトリップ」林 浩一郎編著

 リニア中央新幹線の開業に伴い、上述のように名古屋駅の上部は広場などとして活用される予定で、2019年に出された「名古屋駅駅前広場の再整備プラン(中間とりまとめ)」をみると駅西では2つの建築物が新たに建設される構想もあるようです。

 リニア開業で駅西はどのように今後変わっていくのでしょうか。

 先日、名古屋市立大大学院の林准教授は、「名古屋駅西タイムトリップ」という本を出版しました。この本では駅西で育った男性が1960年代に撮影した地元の写真が多く掲載されているほか、都市改造事業の経緯、駅西で暮らした人たちへのインタビューなどが紹介され、戦後の駅西の歩みがよくわかる内容となっています。

昔ながらの名古屋駅西の雰囲気も大切に…

林浩一郎准教授と堀江浩彰さんの出版記念トークショー(右が林准教授) 6日:名古屋・中村区椿町 ホリエビル

 この中で、林准教授は、「『駅裏』の場所性を見つめ直すことこそ、『駅裏』の内発的な発展につながるとも信じている」と語っています。

 また、駅西出身で祖父母から受け継いだビルをリノベーションし名古屋に関する書籍しか置かない書店を展開するなど、地元の建築や文化を守りながら変革を進めている堀江浩彰さんは、「リニアは大歓迎。ただ昔ながらの名古屋駅西の雰囲気、雑多な感じも大切にしたい」と話しています。

急速に消え去りつつある昭和の街並み

名古屋・鶴舞の自宅前で兄と(1970年頃、筆者は左)

 筆者は1965年生まれで、名古屋の鶴舞地区にある古い住宅地で育ちました。多くが木造建築で、長屋なども何棟かある場所でした。今、小中学校時代を思い返すと、うちも含め近所の方たちは、寄り添い合い、助け合いながら生活していたように感じます(うちは助けてもらってばかりいましたが)。

 駅西地区は、独自の歴史を持った街ですが、映像に残されている人々の表情を見ると、皆生き生きとしていて、明るくたくましく日々を過ごしていたのではないかなと想像します。

 各地で昭和の街並みが急速に消え去りつつあります。これは仕方がないことですが、 駅西が今後、リニアという最先端技術を使った交通の帰着点となる中でも、どこか昭和の「温かみ」を持った街であり続けてほしいなと思う次第です。

(メ~テレ報道センター 松井秀)

【参考文献】
林 浩一郎編著『名古屋駅西タイムトリップ』(風媒社、2025年6月)
林 浩一郎「名古屋駅裏のまなざし――戦後闇市の創造的破壊」(日本都市社会学会年報、2023年9月)

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