手の込んだ職人魂が宿る!ボディラインが美しい『117クーペ』の魅力 前編
車やプラモデル、カメラなど、趣味の世界を楽しむ大人たちに密着してその魅力を調査する『極上ライフ おとなの秘密基地』。2016年~2018年までテレビ愛知で放送され、現在はLocipoでアーカイブを見ることができる。
今回の秘密基地の主は約50年前に発売された、いすゞの『117クーペ』を愛車に持つ岐阜県垂井町の男性。ボディーが美しいといわれ、多くのファンを持つ名車の魅力に迫る。
岐阜県養老町にある自動車整備工場に、低音を響かせながらやってきたのは、いすゞの『117クーぺ』。車のトランクには色々な物が詰め込まれている。「整備したり掃除する時にいつも入れている道具や市販のシャーシブラック(サビ止め塗料)が入っている」と話すのは、今回の秘密基地の主である宮永光隆さん。
117クーぺが置いてあるこの場所は彼の友人が経営する工場で、自分のガレージのように愛車を持ち込んでいる。いわば宮永さんの秘密基地なのだ。無料で有効活用をさせてもらってるのだとか。
宮永さんの愛車は1970年式の117クーペ。年を追うごとにゴムパーツが劣化するため、時々保護するためのつや出し剤を塗り、劣化を防いでいる。この自動車整備工場では、車を磨いたり、整備したりさせてもらってるので非常に助かっているのだそう。「いいやないの、私らでは考えられん。こんだけ車に没頭できるだけ幸せやない?」と自動車整備工場を経営している、佐竹利文さんは話す。
時間を見つけては、ここで117クーペの手入れをする宮永さんだが、そこまで愛するこのクルマの魅力とは?「丸みがあってかわいらしいが、後ろから見た姿が一番好き。斜め後方から見えるアングルで、局面の集合体のような曲線が入り混じった丸いフォルムが、この車の一番のチャームポイントじゃないかなと思う。今の車にはない流麗なスタイルと言うのかな、イタリアの車みたいな感じで」と宮永さんの117クーペ愛が、さっそく伝わる。
いすゞが生んだ名車、117クーペの最大の特徴は流線形のボディライン。しかしこれを形造るのは当時の技術では、とても難しいことだった。当時は、このように丸くて入り組んだ形のものはなく、手づくりでいろんな所の隙間合わせしたため、一般にこれは“ハンドメイド”と呼ばれた車なのだそう。
117クーペのマニアにとって、重要なキーワードでもある“ハンドメイド”。開発当時、いすゞのプレス技術では、この複雑なボディーラインを出すことができなかったとか。そこでイタリアから職人を招き自社の職人を養成、多くの工程を職人が手作業で仕上げた初期型の117クーペ。わずか3年間だけ作られた、貴重な車なのだ。
「このバンパーも一本もんになってますが、実際はここで切れており、つないで溶接してペーパー等できれいに磨きかけいるので、これ一本作るだけでも結構大変な作業がかかっているらしい」宮永さんの117クーペには手の込んだ職人魂が宿っている。
ウッドパネルにウッドステアリング、天然木をふんだんに使ったインテリア。パネル周りは台湾クスノキの一枚板を使い、円形の7連メーターがレイアウトされている。そして窓枠部分には西陣織のカバーが付いている。
時を重ねても、発売当初の姿をできるだけ残しておきたい。だからクーラーやラジオも純正パーツにこだわる宮永さん。クラシックな感じで、オリジナルに近い状態で維持したいのだとか。
これから宮永さんが、117クーペでお出かけするということなので同行させていただくことに。するとカバーの上から掃除し始めた。「ホコリの積もったカバーを触るのも嫌だし、乗る前にちょっと払って、潔癖症じゃないんですけどホコリが付くのが嫌なので。なるべく車をきれいに扱ってやりたい」宮永さんが、愛車をどれだけ大切にしているのかがうかがえる。
カバーの外し方も独特。汚れやホコリが付かないように表を中に折り込む。
さらに、もう一本のホコリ取りを取り出した。「ダチョウの羽の毛叩きでホコリを取る。擦りキズが付かないように気を使いながら、ホコリをさっと流してやるという感じ」と宮永さんは、カバー用と車本体用で使い分けているのだ。
「ホコリ取りを使い分けているのは私ぐらいかもしれないけど、本当に丁寧に扱っている方は持っているんじゃないかなと思う」と宮永さん。車のホコリが取れ、出発の準備は整った。
後編はこちら
『極上ライフ おとなの秘密基地』
【放送局】テレビ愛知 2016〜2018年放送(現在はLocipoでアーカイブを視聴可能)
【番組HP】https://tv-aichi.co.jp/himitsukichi/
【You Tube】https://www.youtube.com/watch?v=lHsyLdJxVwQ