“親会社”で粉飾決算か…美容専門学校閉鎖の背景に7年前の“買収劇” 夢諦めかけた生徒「時間は返ってこない」
粉飾決算を行い銀行からおよそ2億円の融資をだまし取ったとして1月29日、携帯販売会社「アミックテレコム」の元社長の男ら3人が逮捕された事件では、会社が倒産し、その影響で、小牧市の愛知中央美容専門学校の閉鎖にもつながりました。 元生徒は「時間が戻ってくるわけではない」と、怒りを隠せません。
■美容師を夢見る生徒に…"突然の閉校”
愛知県小牧市にあった「愛知中央美容専門学校」は2024年5月、出資企業の経営破綻に伴い、突然閉校となりました。授業料の返還をめぐるトラブルとなり、生徒は転校や退学を余儀なくされました。
元生徒: 「先生とか学校側の話を信じていたから、急につぶれるということが悲しいし、ビックリしている」 別の元生徒:: 「将来が見えないというか、みんなと頑張ってきたのに…」 閉校からおよそ8カ月がたった2025年1月29日、愛知中央美容専門学校の実質的な親会社「アミックテレコム」の元社長・青木隆幸容疑者(68)と、元専務の戸田直樹容疑者(50)、元財務本部長の荒井淳一容疑者(49)の3人が逮捕されました。
会社の債務超過が続いていたにもかかわらず、黒字と偽った決算報告書を銀行に提出するなどし、融資金1億9000万円をだまし取った疑いが持たれています。
■実質的な親会社は「携帯販売会社」 容疑者の素顔は
青木容疑者が社長を務めていた名古屋市の携帯販売会社「アミックテレコム」は1996年に設立され、東海地方で大手携帯キャリアの販売店を展開していました。 事業の多角化を図るため、2017年に美容院を経営する企業を買収しました。この企業からの出資金がおよそ9割を占めていたのが「愛知中央美容専門学校」でした。
買収された美容関連の企業の元従業員は、青木容疑者らに「2年後に必ず良かったと思わせるから」と言われたといいます。青木容疑者と戸田容疑者の印象については…。 買収された企業の元従業員: 「青木さんの印象は一見明るく気さくな方。金遣いというと言葉が悪いですけど、持っている車や持ち物がちょっと派手そうな感じがしました。戸田専務の方がより派手な印象というか、いいご飯を食べて高級車に乗り、ブランド物を持っている」
周囲から羽振りが良いように見られていた青木容疑者と戸田容疑者ですが、2人が経営に関わるようになり、社内の様子が大きく変わったといいます。 買収された企業の元従業員: 「何か今までと違うなって、お金を求めている感じはすごくしました。(美容院の)ネット予約をやらない前提でずっと進めてきていたんですけど、青木・戸田の一存で急に契約するという話になって、『えっ!?』って。新しい人についていけないと思って辞めた人も、少なからずいました」 それまで働いていた従業員は次々と辞め、新型コロナによる美容室の休業も重なり、買収元のアミックテレコムの経営を圧迫していったといいます。 警察によりますと、黒字に見せかける「粉飾決算」は、買収の時期と重なる2017年ごろから行われていたとみられています。
■銀行ごとに虚偽の決算書…数十億円の不正融資受けたか
青木容疑者が経営していた「アミックテレコム」は、十数行の銀行に、それぞれ異なる虚偽の決算報告書を提出していました。決算報告書は銀行ごとにファイリングし、間違えないようにしていたといいます。
捜査関係者によりますと、不正に受けた融資の総額は数十億円にのぼるとみられています。銀行との交渉は主に青木容疑者が行い、自転車操業が続くアミックテレコムの運転資金としていたほか、一部は青木容疑者個人にも渡っていたとみられています。
同じ携帯販売業界で働く男性は、2023年春ごろに悪い噂を耳にしていました。 青木容疑者らを知る同業者: 「財務状況が良くないという話を噂で聞きました。破産する2~3カ月前にお会いしましたね。(青木容疑者は)いつも通りの変わらない感じで『頑張る』みたいな感じでしたね」 資金繰りに行き詰まったアミックテレコムは、およそ28億円の負債を抱え、2023年8月に倒産しました。翌月には買収した企業も倒産し、スポンサーをなくした美容専門学校は2024年5月に閉校を余儀なくされました。
子育てがひと段落し、美容師の夢を目指して入学した女性は、突然の閉校に今も納得できていません。 愛知中央美容専門学校の元生徒: 「時間は絶対に返ってこないですよね。(閉校することは)もっと早く分かっていたことだと思うんですよ。『やめる』って選択肢しか出ない子もいましたね、『もうやめる』って。周りが『頑張ろう』と言ったけど、それでも気持ちが難しくなっちゃったんでしょうね」
■「粉飾決算」認めるも…自身の関与は否定
アミックテレコムの「破産申立書」で、青木容疑者は粉飾決算について自身の関与を否定しています。 <破産申立書> 「私が直接関与していないので正確な開始時期は判明していませんが、黒字の決算報告書となるように不正経理を行い、粉飾決算をしていたことが判明しました」
警察は3人が資金繰りの悪化を粉飾決算で隠すなどして銀行から繰り返し融資をだまし取っていたとみて、余罪などを調べています。