大学入学共通テスト前に半分の生徒が“受験なしで合格”の時代…東北大学は2050年までに全て「総合型選抜」に切り替える方針 変わる大学受験
12月中旬 県立高校3年生の3分の1が受験済み!?
名古屋市中村区の県立松蔭高校。大学受験を控える12月中旬、3年生の教室は空気が張り詰めていました。廊下にはびっしりと赤本も。
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しかし取材した12月中旬の時点で、3年生の3分の1がすでに受験を済ませていたのです。
(合格が決まった生徒)
「レポートと面接で判断された。習い事を幼い頃からやってきたので(面接で)継続力をアピールした」
内申書で決まる「推薦」と、面接と小論文などで決まる「総合型選抜」で大学に入る生徒が今、増えているのです。
(松蔭高校進路指導主事 宮坂直樹教諭)
「筆記試験でははかれない、生徒の特徴をみてもらえるのがメリット」
(合格が決まった生徒)
「1人暮らしを始めるので家を探したり、地元の人と離ればなれになるので旅行の計画を立てたり、家族との時間を大切にしてる」
背景に少子化「早めに定員を囲うことができる」
松蔭高校では3年生350人のうち101人が、共通テスト前に一旦受験を済ませていました。これから受験する生徒に聞くと。
(一般受験の生徒)
「いいなと思う。友達も合格が決まっている人もいるのでうらやましいなと思う。一般受験で最後まで頑張って志望校に行きたい」
(一般受験の生徒)
「一般で受ける身としては、ともに切磋琢磨して競い合う仲間が減るのは寂しい」
文部科学省のまとめたデータでは、大学全体の半数近くが推薦や総合型選抜で入学を決めている現状も。
なぜこうしたことが起きているのか。少子化の中、大学側の事情も見えてきます。
(愛知大学入試課 後藤憲浩さん)
「私立大学の7割が定員割れ。(推薦や総合型選抜は)早めに安定的に学生の定員を囲うことができる」
少子化で定員割れの大学が増え、入学者をどれだけ確保できるかは大学の経営に直結する死活問題。そのため受験シーズン前に、できるだけ多くの学生を確保しようと試験なしでの入学枠を増やしていますが、そこには懸念も。
(愛知大学 後藤さん)
「学力試験を課さないケースもある。基礎学力の低下を懸念」
東北大学「2050年までに全て『総合型選抜』に切り替える」
総合型選抜などを重視する動きは、名門国立のいわゆる旧帝大でも。
(東北大学 滝澤博胤理事・副学長)
「世界と伍する研究大学として、広く東北大学で学びたいという学生を受け入れ育成。25年後のあるべき姿として統合型選抜に移行する。日本の大学の相対的な地位低下が叫ばれる中、世界から優秀な人材を集めて世界に巣立っていく人材育成を目指す」
東北大学は2050年までに、受験を学力試験のみから全て「総合型選抜」に切り替えるという驚きの方針を決めています。
しかし、受験が簡単になるわけではないようです。
(東北大学 滝澤理事・副学長)
「学力は研究大学として大前提。プラスアルファの部分を見させていただく。面接で『東北大学で何を学びたいか』『将来どう生きていきたいのか』を評価する」
厳しい受験をくぐり抜け、入学したら羽を伸ばすというイメージもある日本の大学ですが、東北大は学力だけでなく学ぶ意欲のある学生を選抜し、国際競争力のある人材育成を目指すのが目的といいます。
時代とともに変わり始めた受験の形。それでも将来を拓こうとする真剣な思いは変わりません。
当初の説明では国公立も半数近くが推薦、もしくは総合型選抜と説明していましたが、これは大学側が用意している選抜方式の割合で、最終的な合格の割合は国立大が8割、公立大の7割が一般入試でした。
国内の大学全体では半数強が推薦もしくは、総合型選抜でありより正確な説明に修正しています。