「怪しい音が…」愛知県でも下水道の緊急点検、取材中に“へこみ”を発見「空洞ができている可能性がある」愛知・一宮市

私たちの足下は一体どうなっているのでしょうか。

埼玉県で大規模に道路が陥没して４日目。救助活動は困難を極めています。では、この地方の下水道の今の状況は。愛知県一宮市で行われた緊急点検にカメラが同行すると、わずか１時間だけで異常が見つかりました。

発見した空洞の可能性「響きがちがう」

今週火曜日、埼玉県で発生した道路の陥没によるトラック運転手の転落事故。今日午前に生存率が急激に下がるとされる７２時間がすぎ、運転手の男性の救助活動は予断を許さない状況が続いています。

こうした事態をうけ、国は大規模な処理場につながる、口径２ｍ以上の下水管を緊急点検するよう全国に要請しました。

東海３県には対象となる下水管はないということですが、独自に動き出した自治体もあります。

今日午前、愛知県一宮市でうつむいて歩く市の職員たち。下水管が通っている道の路面を見て、陥没している箇所がないかチェックして回っているのです。どういったところを見ているのか聞いてみると、「へこみとか陥没の前兆で舗装が下がっていたりするので、そういったところがないか確認しています」と答えました。

すると、見つけたのはこのへこみ。職員がハンマーでたたき、下が空洞になっていないか確認します。

一宮市職員：

「こっち高いでしょ、こっちは（低い）違いがあります」

「たたいた感触もありますし響きがちがいます」

職員は空洞ができている可能性があると説明。ただ、緊急度は低いという判断で、後日、あらためて舗装をはがし、点検することになりました。

下水管の破損などが原因の陥没（５０センチ以下の深さ）が、年に約１０件起きている一宮市。緊急点検では、下水管が腐食する原因となりうる、“硫化水素”が発生しやすい場所を中心に、１４.２㎞分を確認することにしました。

映像でも確認を進める職員たち。マンホールのふたを開けて、長い棒を入れていきます。棒の先にカメラがついていて、管の中の様子を映像で確認できるのです。

地下4.5メートルまで降ろすと、見えてきたのはコンクリート製の管。奥の方まで見ることができます。市職員曰く、「管がずれていたりだとか、堆積物があったら、水がそこで阻害されるので、たまっていたりとか、すぐにその映像でわかります」とのこと。

一宮市職員：

「管口の腐食はなしですね」

「たるみも破損もありません」

現時点では、下水管に異常は見つかりませんでした。異常が見つかった場合は修理が必要ですが、課題はその費用。一宮市によると、修理にかかる費用は、下水管１メートルあたり約２７万円。

一宮市上下水道部・伊藤聡専任課長は、「下水道の維持管理をしている担当としては、大変重い課題かなと思っています」と明かし、続けて「実際陥没も小さいのを含めると、一宮市でも起きていますので、身を引き締めて対策していかないといけない」と話しました。

ＡＩで破損を見つける技術は夢物語

一宮市だけでなく、この地方の多くの自治体が自主的に点検を進めています。しかし、対象が「下水道」であることが、異常の把握を難しくさせています。

愛知県豊田市では、“水道管の健康診断”を実施することで、上水道の異常を確認。人工衛星からの電磁波を使って、水道管からの漏水を検知。さらに、ＡＩで水道管の劣化具合を計測し、どの水道管を優先して補修するのか判断しているといいます。

ところが、この仕組み、下水管には使うことができないといいます。下水道は上水道より深い場所にあるため、電磁波が届かないのです。

豊田市によると、電磁波が届くのは、地下２メートルぐらいまで。３～４メートルの深さにある下水管まで届かないといいます。職員からは、「ＡＩで下水管の破損を見つける技術は、まだまだ夢物語だ」という声も寄せられました。

さらに、三重県津市の職員からは、「埼玉では法定の点検はされていたと聞く。何をすれば、事故が防げたのか、法律の見直しが必要なのでは」という意見も。

現在の下水道法（一部抜粋）では、5年に1回以上の点検を義務づけ。ただ、埼玉県の下水道管は、２０２１年度に点検されていながら破損。自治体として、歯がゆい事態が続いています。