名鉄広見線、存続か一部廃止か 開通から100年、沿線人口減り赤字続き 判断は6月に
存続か廃線か…。岐阜県を走る名鉄広見線が揺れています。赤字のローカル鉄道を守るため、さらに多額の負担をするべきか、地元自治体が判断を迫られています。まちの未来をめぐる議論の行方は。
田園地帯をのんびりと走る名鉄広見線。開通から100年以上の歴史を持つ路線です。
このうち、新可児駅から御嵩駅までの7.4kmの区間で議論されているのがーー。
“存続”か“廃線”か。
背景にあるのは、利用者の減少です。約30年前には年間200万人を超えた利用者は、最近では約80万人に。人口減少にコロナ禍も重なり、年間2億円前後の赤字が続いていました。
そして名鉄が去年の夏、自治体に伝えたのがーー。
「今まで老朽化の部分も含めて、手が付いていない状態でもあるかと思うので、そういった部分への投資、継続するなら投資が必要だということで」(御嵩町 渡辺幸伸 町長)
可児市と御嵩町は2010年から毎年計1億円の「運営支援金」を名鉄に出してきました。
それでも、現状のままでは「路線の維持は難しい」との説明を受けたといいます。
必要な投資額は、15年で約17億6000万円に及ぶといいます。
「やはり金額的には非常に大きい。財政上のシミュレーションをしても、大変厳しい数字と認識している」(渡辺町長)
地元に示された2つの選択肢
30日に御嵩町であった説明会には、利用者約60人が参加しました。
示されたのは2つの選択肢です。
一つは「みなし上下分離方式」。運行は名鉄が続ける一方、維持費用は自治体が負担する方法です。この場合、自治体の負担は年間で約1億8000万円に膨らみます。
もう一つは、鉄道を廃線としバス路線に転換する方法。負担額は約6400万円が見込まれています。
しかし…この区間の利用者の半分以上は通学定期の学生です。参加者からは若者の地域離れを懸念する声が上がりました。
「御嵩駅から名古屋駅まで1時間20分くらい。バスだと2時間くらいかかるかもしれない。大学だと2時間くらいが通学圏内になると思う。御嵩町が、名古屋で仕事をしている人にとって住む場所の選択肢になりえなくなって、どんどん若者や人口減少につながるのでは」(参加者)
バスの運転手の確保策や、財源をめぐる質問もありました。町の説明を聞いた参加者はーー。
「高校生の子どもがいて、通学に困るなと思って説明会に来ました。やはり電車を残してほしいと思った。バスだと通学時間が長いので、学校に通う時間が長いほど、子どもも大変」(説明会の参加者 40代)
「鉄道があるならあった方がいいかなと。町のシンボル的なものとして」(説明会の参加者 50代)
判断は6月、専門家はどう見る
廃線に踏み込むかどうかの判断は6月に迫っています。
「100年という鉄道の部分が基軸となって、町づくりもしてきた部分もあるので、町民の方のニーズを聞きながら、最終的には総合的な検討をしていく必要がある」(渡辺町長)
一方、存続に向けた協議を地元と続けてきた名鉄は、今後について「自治体側の結論を踏まえて対応していきたい」としています。
地方の公共交通に詳しい専門家は…。
「"みなし上下分離"を決断するなら、これからの負担は、かなりする覚悟をしないと。そのためにも利用を増やして、地域にとって大切な鉄道として、残して生かしていくことを頑張らないといけない」(名古屋大学大学院 環境学研究科 加藤博和 教授)
鉄道を存続するにせよ、バスに置き換えるにせよ、住民が自治体と一緒に考え、行動していく必要があると話します。
「公共交通をどう便利にして、地域が守っていく気になるかを追求していく。使える局面を見つけ出して、こういう時は使ってみようとか、週に1回ぐらい使えたらいいが、難しいなら月1回ぐらいは通勤してみようと、『他人事』ではなくて『我が事』と、みんな考えてもらえるといいなと」(加藤教授)
バス転換による懸念はほかにも
これまで以上の負担を引き受けて鉄道を維持するか、廃線にしてより負担の軽いバス路線に置き換えるか。名鉄広見線の地元は大きな岐路に立っています。
バス路線に置き換えることについては、若者の流出への不安以外にも懸念の声があります。
「道路渋滞の発生」
・朝夕の通勤通学ラッシュが発生する恐れ
「地域のにぎわいの衰退」
・駅前や駅周辺に集まる人が減って地域経済への悪影響の恐れ
「観光客や観光戦略への影響」
・名鉄の路線図から外れ、沿線地域を訪れる観光客が減る恐れ