「震度1でも倒れます」名古屋市が強制的に解体 “危険な空き家” 持ち主が壊したくても壊せない理由に「固定資産税」も
治安や住環境の悪化にもつながる、放置された「空き家」。みなさんの家の周りにも増えているのではないでしょうか。
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(柳瀬晴貴記者)
「今回取り壊される住宅でしょうか。建物の中の様子は、木がむき出しになっていて、柱も倒れていますね」
さび付いたトタンの壁に、穴の空いた屋根。建物を支える木の柱は、腐りかけています。
名古屋市中村区で近隣住民を悩ませる崩壊寸前の空き家。
(近隣住民)
「風が吹けば(建物が)パタパタいうし、物が飛んでくるし…」
「地震の時も、どうなるか心配だった」
「自転車で通る時(風で)トタンがめくれて、すごかった」
空き家があるのは、JR名古屋駅から西へ3キロほどの場所にある住宅街の一角。
築65年以上が経ち、倒壊の恐れに加え、周辺の生活環境を悪化させているとして、名古屋市は、3年前から県外に住む80代の所有者の男性に対し、撤去するよう指導を繰り返してきましたが、応じてもらえませんでした。そして…
空き家を解体へ…「代執行を実施します」
(名古屋市地域振興部 萩永明登課長)
「同法第22条第9項に基づく、代執行を実施します」
名古屋市は、持ち主に変わって解体する「行政代執行」に着手。いわば"最後の手段"に踏み切ったのです。
まずはバールを使って、手作業での解体作業。建物の中には、人が暮らしていた名残も…
名古屋市による空き家の強制撤去は、これで4例目。しかし、今回の建物は特に危険な状態でした。
「震度1でも倒れます」「怖くて嫌だ」
(解体業者)
「いつ倒れてもおかしくない。震度1でも倒れます。作業者も鉄パイプを持って中に入るのが、怖くて嫌だと」
今回の取り壊しにかかる費用は約200万円。行政代執行では、費用を一時的に立て替えるだけで、後から所有者に請求します。
しかし、過去3件は、いずれも所有者不在や高齢が理由で回収できておらず、その目処もたっていません。
名古屋市内には、こうした“危険な空き家”が約30軒あるということです。取り壊しの様子を見守る人の中には、町内会長の姿も…
(町内会長)
「悩みのタネの一つでした。子どもが中に入って、けがをすると困ると話題になっていた」
さらに、今回取り壊される空き家のすぐ隣の住宅も、人が住んでいない「空き家」であることが判明。地元ではこの数年、空き家が目立って増えているといいます。
(近隣住民)
「大家さんが近くにいない、全く手を付けていない空き家は困ります。何かあったりしても、誰もいないわけですから心配」
現在、名古屋市内で放置されている空き家は4万4600戸。15年前の4万100戸から4500戸も増加し、過去最多となりました。
もはや他人事ではない「空き家問題」。増え続けている背景には、2つの問題があると専門家は指摘します。まずは「少子高齢化」。
団塊世代が亡くなり…急に空き家の所有者に
(塩見明弁護士)
「少子高齢化で団塊世代が亡くなり、相続が進む。急に空き家の所有者になった方も、空き家の利活用や解体の仕方に頭を悩ませる。空き家だけがどんどん増えていく」
もう1つは、「税金」の問題です。
(塩見明弁護士)
「空き家といえども、家が建っていると固定資産税が少し安くなる。さら地の物に比べて。空き家を壊すと(固定資産税が)高くなるので、壊したくても壊せない」