日本経済のどん底を支えてきた「就職氷河期世代」しかし賃金上がらず「世代間格差」も 不遇な人生

2025年も賃上げムードは高まっていますが、ここ数年の賃上げで賃金があまり上昇していない世代があります。40代後半から50代前半の「就職氷河期世代」です。

大学を卒業した人の20代前半の月額の給与の平均をグラフにしました。2021年は22万9千円でしたが、順調に上がり続けて2024年は25万円。若い世代は順調に賃金が上がっています。一方、50代前半の賃金です。2021年に48万円程度でしたが、2023年、47万円に下がって、2024年は49万円でした。賃金の伸びがほぼ横ばいなんです。

この傾向は、40代後半から50代前半にかけて見られるのですが、賃金が停滞している世代は「就職氷河期世代」と一致しています。2025年に50歳となる就職氷河期世代の人を例に、どんな時代を生きてきたか振り返ります。
2025年、50歳を迎える人はイギリスのエリザベス女王が国賓として来日した1975年に生まれました。中学生時代、日本はバブル経済でした。しかし、16歳のときにバブルは崩壊。さらに22歳、山一証券が不祥事で廃業。就職氷河期時代に社会人となり、日本経済の「失われた30年」とともにサラリーマン人生を歩むことに。49歳で30年ぶりの賃上げも、同世代の賃金の伸び率はいまいちという結果になりました。

就職氷河期世代が日本経済の低迷期とともに歩んできたのが分かりました。さらに、気になるのは、大手企業が次々と初任給アップを決めていることです。
ユニクロを運営するファーストリテイリングは、30万円から33万円に。大和ハウス工業は25万円から35万円に。東京海上日動火災保険は約28万円から、転居を伴う場合で最大約41万円となります。初任給アップは、賃金のベースが上がることは喜ばしいですが、就職氷河期世代はどのように感じているのでしょうか。街で話を聞いてきました。
就職氷河期世代の人:
「うらやましくないですか」
「(初任給は)20万ないくらい。時代の流れなのかなとも思いますけど、もう少し我々も(給料が)あったほうがいいかと」

なぜ大企業に勤める「就職氷河期世代」の賃金は上がらないのでしょうか。第一生命経済研究所、首席エコノミストの永濱利廣さんに話を聞きました。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 永濱利廣さん:
「企業の人件費全体の抑制は続けている。なぜ新卒の賃金が上がっているかというと、彼らは人数が少ないことに加え、入ってもすぐやめるリスクが高いので、そうなると、採用する側もできるだけやめられないように賃金は上げざるえない。
一方で40代、50代はこれまで積み重ねてきたこともある、家族もある。なかなか転職に前向きに動きにくいので、そこを足元見られて、経営者側からすると賃金を上げなくてもやめないだろうというところで賃金が上がりにくい状況になっている」
大企業が人件費を抑制していることを示すグラフです。中小企業は、前年よりも2%から3%、賃金が増えています。しかし大企業は、前年よりも0.7%賃金が減っています。この人件費抑制のしわ寄せが就職氷河期世代にきていると、永濱さんは指摘します。

さらに、就職氷河期世代の賃金は日本経済にも影響していると言います。
第一生命経済研究所首席エコノミスト 永濱利廣さん:
「少なめに見積もっても就職氷河期世代は2000万人以上存在していて、今働いている雇用者が6000万人くらいとすれば、3分の1以上は就職氷河期世代。さらに家族形成もあって1番消費をする世代。そこの所得環境が厳しいとなると、経済全体の個人消費もなかなか盛り上がりにくい」
賃上げをめぐって見えてきた世代間格差をどのように埋めるのか。2025年の春闘で注目が集まります。