後継者不足に悩む牧場の救世主に サラブレッドの有数の産地「北海道」でインド人が競走馬育成

北海道は、国内ほとんどのサラブレッドを育てる競走馬の産地です。その産地の1つの浦河町では、インド人が2016年に比べて10倍以上も増加しています。後継者不足に悩む牧場の救世主として活躍しています。
人手不足に苦しむ競走馬の育成牧場

この季節、日本ダービーをはじめ、ビッグレースが目白押しの競馬界。実は、日本の競走馬の実力は世界有数のレベル。国際的なランキングでは名馬イクイノックスが、2023年の世界最強馬になりました。

日本でサラブレッドの98%が誕生するのが北海道です。「世界と戦う」重要拠点ですが、人手不足に悩んでいます。北海道指折りの「競走馬の町」浦河町では20年で約100の牧場が人手が足りずに廃業。そんな北海道の競馬界をいま、支えているのが、年々増えているというインド人です。
競馬界を支えるインド人の存在

北海道に数多く存在する育成牧場では、人を乗せたことがない子馬に毎日乗って訓練し、レースで活躍できる「競走馬」に育てます。ここで、多くのインド人が活躍しています。
育成牧場 森本スティーブル
森本敏正社長:
「日本人をゼロから教えるとなったら最低3年は必要です。(インド人は)早い子であれば本当に1週間2週間あれば、もうそこのレベルまで持っていってくれます」
インドは近代競馬が発祥したイギリスの植民地だったことから競馬が盛んです。馬を扱う技能を持つインド人は、世界の競馬界で働いているといいます。
2015年から右肩上がりでインド人が増加

現在、浦河町に住むインド人は350人ほど。人口の約3パーセントを占めます。
インド人がこの町の牧場で働くようになったのは2015年。以来、右肩上がりで増加しています。日本の牧場での給料は月に20万円程度で、インドの牧場の4倍から5倍です。そして彼らが北海道を目指すもう1つの目的は「技術の習得」です。

ラタン・シンさん:
「(英語)日本の騎乗技術は海外とは違う」
競馬のレベルが高い日本はより厳しい調教を課すため、気性の強い馬との緊張関係も生まれがちです。そこで馬を操る技術を身につければ、競馬場などより稼げる環境も視野に入るといいます。
高度な技術や経験がある外国人人材が重要に

そしてインド人の大半は「技能ビザ」で就労。特殊な分野で技能を生かすことが優先され、日本語ができなくても発給されます。
日本経済新聞社 田口翔一朗記者:
「人手不足や後継者不足が深刻になるなか、高度な技術や経験がある外国人人材の存在はこれまで以上に重要になっています。給与や労働環境の良さをアピールポイントに人材をひきつけつつも、持続的に定着してもらうためには『ともに生きてマチを発展させていく』意志を、自治体も市民も共有する必要があります。
家族が安心して暮らせるように、町には通訳が常駐

技能ビザでは家族も滞在が認められますが、日本語が話せない家族のために町には通訳が常駐しています。さらに、ヒンディー語の母子手帳まで作成。地域産業の担い手として定着してもらうため生活をサポートしているのです。

森本社長:
「(地元で)子どもが生まれてその子たちが日本の教育を受けた中で、次の代の担い手になっていきます。この産業がなくならないような支えになってくれればいいな、と」