商品は有名でも社名は知られていない…「グリーン豆」でおなじみ春日井製菓“スナック”開いて満員御礼

約100年続く名古屋市の老舗菓子メーカー・春日井製菓が、ちょっと「おかしな」取り組みに挑戦して、会社の知名度アップとファン獲得を図っています。いまでは社外にも広がる取り組みを取材しました。
春日井製菓の知名度を上げるために奮闘

春日井市にある農場。ここではエンドウ豆を育てています。作業をしているのは、名古屋の菓子メーカー・春日井製菓の原智彦さん。春日井製菓は約100年続く老舗企業で、「グリーン豆」や、のど飴の「キシリクリスタル」などを製造しています。
広告代理店やマーケティングの仕事をしていた原さんが春日井製菓に入ったのは6年前。「これまで春日井製菓がやってこなかったことに挑戦してほしい」との依頼から入社しました。

春日井製菓 おかしな実験室 原智彦室長:
「入って気が付いたのは、商品は知られているんだけど、会社のことは知られていなくて。違う商品名を言われることもあって。社名はどのパッケージにも入っているので、『春日井ね!』と言ってくれるものにしたかったんです」
「春日井製菓の知名度を上げたい」。原さんがひらめいたのは、異業種が交わる社交場でした。
お菓子とビールを片手に語らうトークイベント

おかしな実験室 原室長:
「お菓子が食べ放題、ビールも飲めるってイベントを行いました。面白い人たちを(ゲストに)呼んでその鎹(かすがい)になる、と」
コンセプトはスナックです。さまざまな業界からゲストスピーカーを呼び、客は春日井製菓のお菓子とビールを片手に、交流を楽しむ。社名と、「子は鎹(かすがい)」の「かすがい」にかけて、「スナックかすがい」と命名しました。

この「スナックかすがい」に客として参加したライターが、SNSに記事を上げると、口コミで評判が広がり、満員御礼が相次ぐように。アンケートには「お菓子がおいしい」「ほかと違う」「面白い会社」との評価が寄せられました。
手応えを感じた原さんは、さらなるブランド強化のために動きます。
おかしな実験室 原室長:
「新しい部署を立ち上げたい。じゃあ、やってみたらと言ってくれたので、『おかしな実験室』という名前で立ち上げました」

文字通り、一風変わった取り組みに挑戦する部署です。しかし、社内から疑問の声も。
春日井製菓 社員:
「春日井製菓の売り上げにどうつながっていくんだろう? 遊んでいるの? あちこち行って会社のお金で、っていう空気もきっとあったんじゃないかなと思います」
そこで原さんが次に取り掛かったのは、社内の認識を変える取り組みでした。
「グリーン豆」ひと粒に思いを乗せる

おかしな実験室 原室長:
「僕らのグリーン豆というおいしいお菓子は、えんどう豆からできているんですけど、ひと粒つくるも大変なんですよ。本当に大変で。(農作業を通して)商品を大事に思うようになります」
始めたのは社員向けの農作業イベント。グリーン豆の原料のエンドウ豆の栽培を体験することで、自社製品への愛着を深めてもらうと同時に、おかしな実験室の取り組みを理解してもらおうと考えました。

参加した社員:
「そのひと粒が、ひと袋にたくさん入っているわけだから。商品ができるまでの思いも、もっと愛おしくなりました。それを社内の人たちにもっと同じ気持ちになってほしいと思いました」
農作業のあとは、参加者同士で“異業種交流”

参加者は徐々に増加。新入社員の研修の場や、一般の参加者も交えて取り組むようになりました。農作業のあとのワークショップでは、参加者がそれぞれの悩みやアイデアを語り合う異業種交流の場に。数々のコラボレーションや、ビジネスチャンスが生まれるようになったのです。
「おかしな実験室」は一企業の取り組みの枠を飛び出し、広がりを見せ始めています。

おかしな実験室 原室長:
「社内から『応援しているよ』『ありがとう』と言われるのはすごくうれしくて、やっていて良かったな、と。おかしなことで、社会を明るくするとその照り返しで会社が明るくなる。そんな活動をどんどん増やしていきたいです」