体験型に変貌で今や「地域の観光資源」や「ファンづくり」の役割も 進化する企業ミュージアムを解説

企業がその歴史や製品、技術、活動などを展示・紹介する施設「企業ミュージアム」現在は全国に1000以上あるともいわれています。これまで企業ミュージアムは、主に社員教育や取引先との商談の場としての活用されていましたが、その役割から大きな変化が起きています。中日BIZナビ編集部の岸友里記者と「企業ミュージアム」のいまを読み解きます。
一般には非公開だった企業ミュージアムも

企業ミュージアムとは、企業がその歴史や製品、技術、活動などを展示・紹介する施設です。現在は全国に1000以上あるともいわれています。これまで企業ミュージアムは主に、社員教育や取引先との商談の場として活用されてきました。例えば小牧市にある日本ガイシの「碍子(がいし)博物館」は、一般には非公開で社員の研さんの場に。名古屋市西区の「トヨタ産業技術記念館」は、トヨタグループの社員研修はもちろん、他社の研修にも使われています。
その企業ミュージアムがいま、企業のファンづくりや地域の観光資源としての役割も担うようになってきているのです。
「ミツカンミュージアム」で酢づくりの歴史や製造工程を学ぶ

地域の観光資源として活用しているのが半田市にある「ミツカンミュージアム」です。ミツカンといえば「お酢」。江戸時代の酢づくりの様子から現代の製造工程まで、その変遷を知ることができます。展示の横には、大きなモニターが。落ちてくる「お酢」の材料をかき集めて、さまざまな酢を完成させるデジタル技術を駆使したゲームです。さらに、フードロスをテーマに未来の食べ物について考えるゲームも。まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を組み合わせて、架空の未来の食べ物を作り出します。
「“楽しい”という気持ちが思い出に」

ミツカンミュージアムは2024年3月に「体験型」に大幅リニューアル。その狙いは「体験してもらい“楽しい”と感じて、思い出に残してもらう」こと。
ミツカンミュージアム 新美佳久館長:
「体感したときに“楽しい”という気持ちがなければ、いろいろな思い出として残らないと思います。体験してもらって楽しんだ結果としていろんなことを理解してもらえます」

館長によると、来館者から「子どもが楽しめた」という声が増えたそうです。子どもたちは楽しく遊んでいるうちにミツカンにまつわる知識が身につき、企業への良いイメージも醸成されます。

一般消費者を相手にする企業だけに、幅広い層の取り込みに力を入れています。半田市は江戸時代に海運で栄えた半田運河が流れ、当時の面影を残す街並みなど歴史的な見所はあるものの、実は観光スポットが少ないんです。ミツカンミュージアムは体験型エンタメ施設としてリニューアルしたことで、全国各地から人を呼び込み、半田市の観光客の増加を考えています。
新美館長は「ミツカンはこの地で生まれ、この地の人たちが会社を大きくしてくれました。観光資源として地域に恩返ししたい」と話していました。

さらにミツカンミュージアムでは展示・パンフレットは日本語だけでなく、英語、韓国語、中国語でも表記。セントレアが近いこともあり、インバウンドを取り込みたい考えです。
ほかにも、ミツカングループの海外社員向けという点が大きいです。外国人の研修を受け入れ、企業理念や歴史、酢づくりなどを伝えて、人材確保や社員定着を図っています。企業ミュージアムを観光資源にしていく動きは、今後も続いていきそうです。
(6月23日放送「5時スタ」 中日BIZナビ共同企画「東海ビジネススコープ」より)