老舗2社が名乗れない「八丁味噌」ブランド問題が解決 岡崎城から「八丁」の老舗 国の方針受け入れた再申請で“追加登録”
みなさんのソウルフードはなんでしょうか?愛知県岡崎市の老舗メーカーが作る「八丁味噌」が、製品に「八丁味噌」と表示できなくなるという心配がありました。しかし、問題勃発から約7年、ようやく解決です。
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愛知県岡崎市の老舗八丁味噌メーカー「カクキュー八丁味噌」が手掛ける食事処。味噌煮込みうどんや味噌カツなど、メニューは「八丁味噌」を使ったものばかり。
そもそも「八丁味噌」の「八丁」とは家康が生まれた岡崎城からの距離を示すものです。城から西へ八丁、900メートルほど離れた「八丁村」でつくられた味噌だから「八丁味噌」といわれているのです。
(岡崎市民)
Q岡崎市の名物といえば?
「やっぱり八丁味噌でしょ。(味噌は)八丁味噌しか食べない」
「味噌は八丁味噌を使っている」
さらに岡崎市民にとって「八丁味噌」といえば?
(岡崎市民)「八丁のところの2社」
2社とは、老舗の「カクキュー八丁味噌」と「まるや八丁味噌」のことです。2社は江戸時代初期から「八丁村」(現在の岡崎市八丁町)で、木桶を使い石積みをする伝統製法で八丁味噌を作り続けています。しかしこの老舗2社の商品が「八丁味噌」を名乗れなくなる危機が起きたのです。
老舗が「八丁味噌」を名乗れない事態とは?
ことの始まりは2017年。農水省が良質な特産品をブランドとして保護する「GI(ジーアイ)=地理的表示保護制度」に関する問題です。
「カクキュー」と「まるや八丁味噌」の2社で作る組合=「八丁味噌協同組合」は、「八丁味噌は岡崎市で木桶を使うなど伝統的な製法で生産したものに限る」としてGI制度への登録を申請していましたが…。
農水省は愛知県全域を生産地として、木桶だけでなくタンクを使った現代的な製法で作る37社からなる「愛知県味噌溜醤油工業協同組合」を”GI制度”の生産者に登録したのです。
「八丁味噌を守りたいという一心」で老舗が提訴
これに対して老舗側は2018年に。
(八丁味噌共同組合 早川久右衛門理事長)
「お客様を混乱させるものであり極めて不当だと考える。私どもが今回このような判断をした理由は、長年お客様に受け入れられてきた『八丁味噌を守りたい』という一心のみ」
老舗2社のうち「まるや八丁味噌」は、国の方針を不服としてもう一つの組合の生産者登録を取り消すよう求めて提訴したものの、去年3月に敗訴が確定しました。
このため、2社は来年2月以降は「八丁味噌」を表示できなくなるおそれがありました。あらためて30日、老舗2社に今の思いを聞きました。
(まるや八丁味噌 浅井信太郎代表取締役社長)
「不思議だなと、残念だなどうしてそんなことが起こったのかと」
(カクキュー八丁味噌 野村健治企画室長)
「名称と作り方を合わせて理解されているので、名前がなくなるとこだわり製法で造っているのがわからなくなってしまう」
結局、老舗2社は「八丁味噌」を継続して表示するために去年7月、愛知県全域を生産地としてブランド保護するという国の方針を受け入れ、GI登録を再申請しました。
老舗から安堵の声「ほっとした お互い頑張っていくしかない」
そして1月24日、この「問題」に終止符が打たれました。国は老舗2社の組合を追加登録したと発表。「八丁味噌」を表示できなくなるという心配はなくなったのです。
(まるや八丁味噌 浅井信太郎代表取締役社長)
「八丁味噌の四文字が引き続き使えて、お客様も安心して使えることがまず良かった。長く利用してきたこの造り方を引き続き守って、お客様にお渡しして、この伝統文化を続けられれば。私たちそれだけが役割なので。やっていこうと」
(カクキュー八丁味噌 野村健治企画室長)
「ほっとした。各社それぞれのこだわりや頑張りがあると思うので、それをお互い尊重して。うちはうちで昔から続けた製法を続けるし、お互い頑張っていくしかない」
2017年にすでにGI登録されていた組合にも、31日聞きました。
(愛知県味噌溜醤油工業協同組合 平松誠専務理事 名古屋・中区)
「とてもいいことだなと思っている。お互い切磋琢磨しながら、いろんな人たちに美味しいものを届けていける状態が整った」
「古い方が『八丁味噌』」「ブランドにはこだわらない」街の声は今もさまざま
一連の流れを岡崎市のみなさんはどう受け止めたのでしょうか?
(岡崎市民)
「岡崎城の八丁向こうで作られたのを『八丁味噌』と呼ぶんだから、全体を八丁味噌と呼ぶのはピンとこない」
「味とか価格とか(で選ぶ)。あんまりブランドにこだわりがない」
名古屋の街でも聞きました。
(名古屋市民)
「昔から頑張って生き延びてきたほうを応援したくなる」
「私が(2社の)立場だったら、古くから頑張ってきたのに『なんで新しく入って来た人が?』って思ってしまう」
(愛知・東海市民)
「古い方が八丁味噌って感じ。新しいものよりかは歴史がある感じがするから」
(名古屋市民)
「それぞれ良いところはあると思うので、両立していける方がいい」
長きにわたった「八丁味噌」問題。さまざまな思いを老舗2社が飲み込んで打たれた終止符。消費者としては「おいしい味噌をこれからも…」という信頼と期待に変わりはありません。