今どきの「生前遺影撮影」 病気を患い人生を見つめ直した女性の終活に密着 人生の“最終章”は自分のために…

きょう4月28日は語呂あわせで「シニアの日」です。
自分のための、こだわりの遺影撮影に臨む一人の女性を取材しました。
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名古屋市北区にある創業91年の「モナミ写真館」。
(田中親子)「こんにちは、お願いします」
この日、やってきたのは田中葉末さん(75)。付き添いは娘の明子さんです。
(娘・明子さん)「これは私が七五三のときに着た着物」
これまで七五三や成人式のときに、田中さん一家がお世話になってきた写真館ですが、今回、撮影をお願いするのは…
(田中葉末さん(75))「病気したことで自分のことを自分で始末していけるようになりたい。写真はなかなか撮る機会がないので、チャレンジしてみようかなと」
自分のために遺影を撮ります。モナミ写真館では生前遺影特別料金として、撮影料1万1000円から年齢分を割引くシステムを導入。
75歳の田中さんの場合、撮影料は7500円割り引かれ、3500円です。
40年以上“素顔”で生き続けて…久々のメイク
(モナミ写真館 代表 兵藤ゆきえさん)「免許証やマイナンバーの写真を持ってきて『遺影写真の加工できますか』という人が多い。長く人生を歩まれた人が、最後その写真でいいのか、家族はうれしいのかな」
代表の兵藤さんがヒアリングした後、ヘアメイクは兵藤さんの母・麗子さんが担当。
(兵頭さんの母・麗子さん(78))「きょうはお母さん一番きれいな日だから。遺影写真って思っちゃいかん、人生の1ページ」
田中さんは今に至るまで40年以上、介護士の仕事を続けていて、化粧はほとんどしません。
(兵頭さんの母・麗子さん)「素顔で生きてきた人に(化粧を)いきなりやっても人生出てこない。自然体に仕上げようかな」
ポイントはあえてシワは隠さず、ツヤのあるメイクをすること。
(兵頭さんの母・麗子さん)「『シワが嫌だ』って言うけど、私はシワがすてきだと思う。人生の刻みだもの、これだけ生きてきたっていう」
久々にメイクした田中さん。思わず涙が…
撮影後、最高の1枚 「私ではないくらいきれいに…」
(兵頭さんの母・麗子さん)「えんまさまとのお見合い写真。えんまさまに嫌われたら困るから」
(田中葉末さん(75))「自分ではないみたい」
そして…
(モナミ写真館 代表 兵藤ゆきえさん)「うわー、すっごいいい!めっちゃいい!ばっちりじゃないですか!」
明るい呼びかけとともに、笑顔も増えていく田中さん。慣れない姿勢に少々苦戦しながらも無事に撮影は終わりました。
(田中葉末さん)「写真館で(撮る)のは初めてなので緊張した」
(娘・明子さん)「久しぶりにこんなに、元気な母の笑顔を見た」
約20枚のデータの中から1つを厳選します。
(田中葉末さん)「右がいい気がする」
選んだのは笑顔の1枚。
(田中葉末さん)「私ではないくらい、きれいにできていて。緊張と涙と笑いがあって、良い時間だった」
75歳の田中さん。そもそもなぜ今回遺影を撮ることにしたのか。自宅に伺いました。
一時的に突然失われる記憶障害に…
(田中葉末さん)「1月に健忘症という、私にとっては初めての大病(を患った)」
娘・明子さんが撮影した動画では…
(田中葉末さん)「これは何?」
(娘・明子さん)「それはカフェオレだね」
(田中葉末さん)「これも私のじゃない。私買わないもん」
(田中葉末さん)「記憶がない」
(娘・明子さん)「おでんを作った(記憶が)?」
(田中葉末さん)「うん」
記憶が一時的に突然失われる記憶障害「一過性全健忘」を患いました。
症状は24時間以内に治まるものの、「なぜここにいるのか?」「何をしていたのか?」直近の出来事が一時、わからなくなったといいます。
(田中葉末さん)「私にとっては青天へきれきのような感じ。カバンの中に保険証は入れておいたから困らなかったと(娘は)言ってくれるけど、何かあったときに本当に困る。だからエンディングノートを買った」
“自分のために…” 人生の最終章を模索して
今はすっかり治ったそうですが、この病気を機に、エンディングノートに親戚・友人の連絡先や、暗証番号などをまとめることにした田中さん。
そして、体が動くうちにやりたいことをなんでも…
(娘・明子さん)「逆に病気を経験してから、元気になってくれている。終活は終わっていくというよりも、次のステージに向けて心が若返ったり、違う人生の歩き方を模索できるのを母を見ていて思う」
4月26日のこの日、できあがった写真を受け取りに…
(田中葉末さん)
「本当にすてき。この写真だったら持って歩いて『これ私なんですよ』って(言いたい)」
「今までは老後のためにお金ためなきゃとか、孫のためにとか思っていたけど、自分のために(使いたい)。今まで頑張って働いてきたので。自分の人生の最終章。80歳になったら、また撮りに来たい」