名古屋証券取引所=名証が上場企業の獲得に成功 名証でも「全国の企業が上場できる」ことがメリット
中部地区を地盤に株式売買の市場となる名古屋証券取引所=名証。その名証が特徴を生かしてさらなる上場企業の獲得に成功しています。企業が感じる名証の魅力を探りました。
東海4県以外に本社を置く企業が名証に上場
8月29日、名証に上場したのは、ミアヘルサホールディングスです。この会社は、東京に本社を構え、調剤薬局や介護施設などを関東で展開している会社です。しかし、名証と関わりが深い東海地区に事業所はありません。
ミアヘルサホールディングス 青木文恵社長:
「より多くの中京圏の人に当社のことを知っていただきたいというのがきっかけです」
最近、こうした東海4県以外に本社を置く企業が、名証に上場するケースが増えています。10年前では1、2件でしたが、2023年と2024年はともに5件で、過半数となりました。さらに、2024年に東海4県以外から上場した企業すべてが、名証以外の市場と重複して上場しています。
ミアヘルサホールディングスもすでに上場した東京証券取引所=東証と重複して名証に上場しました。
東海4県以外からの上場が増えている名証ですが、新規上場の条件に、本社所在地などエリアの制限はありません。
日本の証券取引所は、名証のほかに、東京の東証や福岡の福証、札幌の札証の4カ所あります。福証や札証では、一部市場で対象エリアに本社や関連があることが、新規上場の条件となっていますが、名証はすべての市場で全国の企業が上場でき、エリアについては、東証と同じ条件となります。
競合する東証と大きく異なるのは、市場規模です。名証全体の時価総額が約228兆円に対し、東証全体は約998兆円と、4倍以上の差があります。また、法人で大口の投資をする「機関投資家」と個人の資産から投資をする「個人投資家」の比率にも違いがあります。東証は、個人投資家が約3割で、名証は、個人投資家が約8割となっています。
この「個人投資家」に向けたある策が名証の新規上場の増加につながっているといいます。
9月6日から名古屋市千種区の吹上ホールで始まったのが「名証IRエキスポ」です。
「IR」とは投資家向けに情報を提供することで、会場には名証上場企業など116社が出展しています。来場者は2日間で8500人を見込む一大イベントです。
QLSホールディングス 雨田武史社長:
「今、力を入れているのがM&A、企業買収」
会社の成長戦略について説明するのは保育や介護の事業を行うQLSホールディングス。2024年6月に名証へ上場しましたが、本社は大阪市にあります。
QLSホールディングス 雨田武史社長:
「個人投資家に株をたくさん買ってほしい。個人投資家向けの市場ということで名証を選んだ」
参加した投資家:
「足元の業績の肌感が得られたのはよかった」
こうした活動を続ける名証の役員に話を聞くと…
名古屋証券取引所 鈴木武久常務:
「個人投資家の方がどちらかというと長期保有という意識をかなりお持ちなので、やっぱり自分のファンになっていただけるような、長期保有していただける国内の個人投資家というのがいま非常に企業としても注目してるんじゃないかなと思います」
重複上場の増加については…
名古屋証券取引所 鈴木武久常務:
「名証が提供してるサービスを活用したいというようなお話が一番多いかと思う。少しずつ少しずつそういった企業さんを増やしていきたいという思います」
名証の取り組みについて、名古屋市立大学経済学部の坂和秀晃准教授は…
名古屋市立大学経済学部 坂和秀晃准教授:
「(IRイベントとかで)こういう経営をしているんだとかこういうビジネスモデルで今後経営されていくんだとか、そういうことがわかると、そういう企業なら投資してもいいかなとか、そういうふうに考えるきっかけになると思います」
東海地方以外からの新規上場によるこの地方への影響は…
名古屋市立大学経済学部 坂和秀晃准教授:
「(東海地区の)名証に上場した企業と東海地域の関係っていうのもやっぱりできてくると思います。そこから仕事や雇用が生まれたり、あるいは取引が増えたりとかという感じで、東海経済にとっていい波及効果があるのではないか」