「手錠かけられパニック」 無罪判決の男性取材応じる 名古屋・中区新栄クローゼット遺体事件

おととし名古屋市中区のマンションの一室で遺体が見つかった事件。死体遺棄の罪に問われていた男性の無罪判決が確定しました。その男性が中京テレビの取材に応じ、悲痛な胸の内を語りました。

小山直己さん:「本当に正義だと思っていたんで、警察とか検察が。まさか証拠もなく憶測だけで、逮捕起訴されるとは思ってなかった。間違いだったことを認めてほしい」
3月28日、カメラの前でこう語ったのは、小山直己さん(24)。
死体遺棄の罪に問われ、3月、一審の名古屋地裁で無罪判決を受けました。
記者:「『被告人は無罪』という言葉を聞いた時はどうでしたか」
小山さん:「もちろん、うれしかったですね」
そして控訴期日の31日、検察は控訴を断念。小山さんの無罪が確定しました。

小山さんはなぜ、罪に問われることになったのでしょうか?
ことの始まりはおととし11月―。名古屋市中区のマンションの一室で、ブランド買い取り店店長の阿部光一さん(当時42)の遺体が見つかり、知人の内田明日香被告(31)が、強盗殺人と死体遺棄の罪で起訴されました。
そして、死体遺棄の犯行を手伝ったとして、内田被告が通うホストクラブで働いていた小山さんも逮捕・起訴されたのです。

当時のことについて…。
小山さん:「刑事の勘でお前がやったと思ってるみたいな。手錠をかけられてパニック」
小山さんが起訴されたワケ。去年2月から始まった裁判で、検察が証拠としたのは「内田被告の証言」でした。
<内田被告の証言>
「遺体を運びたいけど重くて動かないと言うと、(小山さんが)手伝ってくれて、2人で遺体をクローゼットに隠した」

内田被告は阿部さんが亡くなったのは、おととしの9月29日で、遺体をクローゼットに隠したのは、その5日後、小山さんとマンションに行ったときだと証言。この証言の信用性が裁判の争点になります。
その日の防犯カメラに、マンションに出入りする2人の姿が映っていて、検察側は証言は信用できるとして、小山さんが死体遺棄を手伝ったと主張しました。
しかし、小山さんによれば、実際は「知人に部屋の掃除を頼まれているから、ついてきてほしい」と内田被告に言われただけで、遺体を見てすらいないといいます。
小山さん:
「気付いたら、奥の方の部屋に入っていって、そこから見てなくて。戻ってきたら『もうそのまま行こう』って言われて(家を)出た」

さらに、内田被告の証言にはある矛盾が。
これは内田被告の主張をもとに、事件現場と同じ状態の部屋を用意し、遺体の移動を再現した映像です。内田被告は、クローゼットに遺体を運ぶ際に、2人で180度回転させたと話していました。
しかし、実験では家具が邪魔になり、証言通りに移動させることができなかったのです。このことから弁護側は、内田被告の主張は信用できないとしていました。

そして、3月17日の判決公判。
名古屋地裁は、「内田被告の供述の信用性には合理的な疑いが残る。被告が遺体を前にして驚く様子もなく、簡単に遺棄を手伝うと了承したのは不自然である」などとして、小山さんに無罪を言い渡していました。

むかえた31日の控訴期限。検察は控訴を断念。理由について「判断を覆すことは困難」としています。
無罪の確定を受け、小山さんは「終わらない悪夢からようやく目覚めた気分です。今後、二度とこんな思いをする人間が現れない事を願っています」とコメントしています。