卵の高騰で注目される“殻を外した卵”「液卵」 猛暑や鳥インフル影響避けられ価格も安定、長期保存も可能

猛暑による産卵数減少や鳥インフルエンザの感染拡大の影響により、卵の在庫状況や価格高騰が深刻化しています。JA全農たまごが発表している名古屋地区の卵の価格を見ると、2024年の夏ごろから少しずつ上がり、2025年2月には2023年の過去最高の数字に迫る327円となっています。
そこで政府が卵を大量に使うメーカーに呼びかけているのが、殻を取り除いた卵「液卵(えきらん)」です。「液卵」の特徴や利用するメリット、今後の価格変化などについて調べました。

愛知県養鶏協会の内田清政事務局長に取材したところ、価格高騰の背景にあるのは猛暑による産卵数減少、冬需要の高まり、鳥インフル感染拡大だとしています。猛暑の影響で暑さに弱いニワトリが夏バテし、2024年9月ごろから産卵率が2025年も低くなっているのです。内田さんは「今年も2023年と同等の高値になるのでは」と予想しています。
そんな中で注目を集めるのが「液卵」の活用です。液卵を製造・販売している豊橋市の会社、丸鳥鶏卵の白井宏昌さんに取材しました。
液卵の賞味期限は製造から冷凍した状態で2年

液卵とは、殻を取り除いた状態の卵のこと。黄身と白身が混ざったものや、黄身が割られていないものといった種類があります。製造後に凍らせて使うときに解凍するものが多く、主に業者向けの商品ですが、家庭用に販売されているものもあります。ちなみに食中毒の原因になるサルモネラ菌は事前に殺菌していて、解凍後に加熱をすれば食べられます。

この液卵を使うメリットは大きく4つ。1つ目は「長期保存できる」こと。賞味期限は製造から冷凍した状態で2年。買って冷凍保存しておけば、必要なときに必要な分だけ使えます。
2つ目は「調理の時短」。殻を割って混ぜる手間がかかりません。割らなくていいので手が汚れないのも利点です。そして3つ目は「口当たりの良さ」。液卵は特殊な機械でろ過されているので、卵が均一に混ざっていて調理ムラができにくくなっています。
夏に多く製造することで、価格を一定に保つ

最後は「価格の安定」です。実は液卵は1年を通して価格がほとんど変わりません。丸鳥鶏卵では、市場での相場が下がる夏に多く製造しておいて卵の需要・価格が高くなる冬の分までストックします。こうして価格や供給を安定させているんです。
ただ、今後の卵の在庫次第では、現状の価格維持が難しくなる可能性もあるそう。丸鳥鶏卵の白井さんは「今後もニーズに合わせて製造したい」としています。
Mサイズ6個分で250円、少し割高か

ちなみに近年は業務用だけでなく、家庭用の需要も高まっています。丸鳥鶏卵は5年前から家庭用の凍結液卵をインターネットで販売していて、価格はMサイズの卵6個分相当で250円です。
量を考えると少し割高かもしれませんが、長期保存や調理の時短というメリットを考えたら手に取る理由になりそうです。丸鳥鶏卵によると、家庭向けの液卵の販売数はエッグショックで卵が高くなった2023年以前に比べて、1.5倍まで伸びたといいます。
卵を選ぶ際に液卵を選択肢の1つとして考えてみてください。