
高齢者には不安も…津波の浸水想定域で整備進む『避難タワー』南海トラフ地震に備え“意識の向上”を


南海トラフ巨大地震の被害想定が13年ぶりに見直されました。三重県では死者が2万9000人に及ぶとされていて、津波避難タワーの建設などが進められていますが、高齢化が進む中、住民側の防災意識の向上も欠かせません。
■死者の想定“減少”も…東海3県で5万人近くに
駿河湾から日向灘にかけての南海トラフ沿いで起きるとされる、南海トラフ巨大地震の被害想定が13年ぶりに見直され、公表されました。 福和伸夫名大名誉教授: 「なんとしても南海トラフ地震の被害を減らさない限り、この国の将来が非常に危ぶまれる」

見直された被害想定によりますと、名古屋市や豊橋市、津市など44市町村で震度7の揺れが観測され、死者数は、三重県で2万9000人、愛知県で1万9000人、岐阜県で300人に及ぶとされています。

津波対策や耐震化が進み、これまでの想定に比べて減少しました。
■津波対策でタワー建設…高齢化で登れるか不安も
津波による死者が全体の6割を超えるとされる三重県では、津波への対策が進められてきました。 志摩市の阿児町国府地区には、太平洋に面した「国府の浜」があり、週末には多くのサーフィン客で賑わいます。

市は2024年、津波の浸水想定域となっている国府地区の3カ所に、津波避難タワーを設置しました。

タワーの高さは県の想定を超える12メートルあり、最大で244人を収容できます。備蓄倉庫には2日分の食料や毛布、簡易トイレなどが備えられています。

地元住民: 「やっぱり安心は安心ですね。そういう時にはタワーへ行こうと」 志摩市では東日本大震災以降、2025年3月までに避難タワーを6基整備していて、2028年までにさらに4基の建設を目指しています。 志摩市役所防災危機管理課の担当者: 「(津波避難)タワーができたのがスタートであって、これを使うことができる人を増やすことが一番の課題になるのかなと」

住民からも、高齢者が避難タワーに登れるのか、心配する声が上がります。 80代の地元住民: 「年寄りが多いものですからね。私も年寄りですので、腰が痛いんです。タワーも上りかねるんですけども」 志摩市は、65歳以上の高齢者が人口の42.2%を占めています。多くの高齢者がスムーズに避難するため…訓練などを通じて今後、住民の避難意識を高めることが命を守るカギになると言えそうです。 志摩市役所防災危機管理課の担当者: 「まず向かっていただく、何よりそれが大事。命を守ることを第一に考えていただけたらなと」
■津波到達まで尾鷲では“3分”…迅速な避難を
新たな被害想定では、地盤や地形のデータを見直したことなどから、津波の到達時間も多くでこれまでより速くなり、尾鷲市で最も速い3分、志摩市で5分、名古屋市港区でも95分などとなっています。

死者数は前の想定より減っていますが全国で29万8000人で、被害想定を取りまとめた名古屋大学の福和伸夫名誉教授は3月31日、「被害の甚大さ、広域性を踏まえると、従来の国や行政主体の対策では限界ある」と話しています。 特に国民に対しては「住宅の耐震化や家庭での備蓄、迅速な避難行動に可能な限り取り組んでほしい」としています。 国の想定見直しを受け、各県は独自に出している被害想定の見直し作業に入り、愛知県や三重県では2026年、岐阜県も2027年春めどに公表する予定です。