密着 名古屋のホテル改装大作戦「壁を取り壊して2部屋を1つに」観光客の“悩み”を商機に

夏の旅行シーズン、名古屋でも観光客の姿を多く見かけます。家族やグループで旅をする人たちには、実は悩みがあるというんです。その悩みをチャンスに変えようと、名古屋駅にあるホテルが、大改装に踏み切りました。
名古屋駅の真上にそびえる、名古屋マリオットアソシアホテル。
700以上の客室を持つ大型ホテルで“改装大作戦”が行われました。
工事が始まったのは、今から2カ月ほど前のこと。そして――
「普段は静かなホテルの廊下ですが、今日は何やら作業をしているようです。ドアを開けてみます。今まさに天井が壊されています」(記者)
ホテルには似つかわしくない工具を駆使する匠たち。一体何をしているのでしょうか。
「客室の間の壁を取り壊して、2部屋を1つにつなげる」(施設担当 原正樹さん)
改装大作戦の狙いは?

もともと隣り合っていた2つの部屋。間にある壁をぶち抜き、1つの部屋にするというのです。
部屋の壁がはがされていき、壁の向こう側から、切れ目が入っていきます。
「隣の部屋の壁から手が出てきました」(記者)
そして、作業開始から2時間。2つの部屋の間にあった壁がなくなりました。
「壁を壊すために天井も一部壊して、そこからすべての壁を取っ払う。私としても初めての経験、ここまでの改装はなかなかなかった」(原さん)
劇的な工事が続く改装大作戦。いったい、その狙いは?
「4~5人のファミリーが、同じ居室の中で過ごしたいと、家族で一緒に過ごせる部屋を作りました」(名古屋マリオットアソシアホテル 杉本篤史 総支配人)
このホテルでは、以前はファミリールームは3部屋だけでしたが、去年、4部屋を追加。
その部屋が好評だったことから、今年、新たに16部屋を作ることにしたといいます。
ファミリールームの需要を調査

しかし、本当に需要があるのでしょうか。名古屋観光をする家族連れに宿泊事情を聞いてみると――
「2人で1ベッドずつ」(4人家族)
Q.子どもがもう少し大きくなると?
「ちょっと厳しい」(4人家族)
「きのう落ちた、ベッドから…」(4人家族)
Q.4人でホテルに泊まろうとすると?
「2対2で分かれますかね。みんなで一緒に過ごしたい」(4人家族)
Q.ファミリールームがあると?
「全員で楽しめるので、その方がいいです」(4人家族)
スペインからの家族連れは、2人ずつ2部屋に分かれて宿泊中だそうで――
Q.ファミリールームに興味ある?
「もちろん、そっちの方がいい。1部屋でみんな入れる、家族全員。私たちみたいに2人と2人で分かれるのが、家族が全員一緒だと、よりうれしい」(スペインから)
「ベッド4つは外国人の家族向けに良いと思います」(メキシコから)
想像以上にファミリールームは好評。これは、期待できそうです。
新客室は5人宿泊も可能に

そして8月1日、ついに完成した部屋を案内してもらうと――
なんということでしょう。広々とした部屋に4つのベッド。2つの部屋を隔てていた、壁がなくなりました。
エキストラベッドを入れると5人が泊まれるファミリールームに。
これまでより大きくなった冷蔵庫は、冷凍室も加わり、つめた~いお土産もしっかり保管できます。
2部屋分のバスルームは、あえてそのまま残しました。そのため、1部屋に2つのバスルームが。
「お風呂待ちをしなくてもいいというのがメリット」(原さん)
匠の技が光る、改装大作戦となりました。
多様な部屋を用意して差別化

政府は、今後もインバウンド客を呼び込み、2030年には今の約1.6倍、年間6000万人に増やす目標を掲げています。
膨らむ需要を見越した業界内の競争も激しくなるなか、マリオットでは、多様な部屋を用意し差別化を図ります。
「名古屋には魅力ある観光施設、レゴランドやジブリパークがあり、『家族で訪れる街』になってきた。客室数が多いからいろいろなバラエティーの部屋を用意し、ニーズに対応する」(杉本総支配人)
ファミリールームは1室8万1000円から。新たにできた16部屋は、6日から宿泊開始です。