
【大阪・関西万博】“使い終わると森になる建物”から“CO2を吸収する装置”まで 未来を変える「地球沸騰化」対策の技術が集結!

“地球沸騰化”と言われるほど急激な気温上昇が起きるなか、大阪・関西万博のテーマとして掲げられているのが「グリーン万博」。沸騰化対策につながる驚きの技術が集結していました。
使い終わったら森になるタマネギ型建物!?

連日、多くの人でにぎわう大阪・関西万博。その会場で、周りが木々に囲まれた癒やしの空間を見つけました。

まるで森の中にいるような景色が広がっていますが、ここは一体、どういう場所なのでしょうか?
日本国際博覧会協会 髙科淳 副事務総長:
「大阪府内の公園を中心に間伐される予定だった木をここに移植して、新しく命をつないでもらうため、ここに大きな森をつくった」
会場の中心に位置する「静けさの森」。約1500本の木が植えられていて、緑あふれるこの空間がまさに「グリーン万博」に思えますが、実はテーマの中心となる場所はここではないのです。

「グリーン万博」と銘打つ場所とは、白いタマネギ型の休憩所「森になる建築」。

植物性の樹脂を使用した3Dプリントでつくられた建築物なのですが、よく見ると壁に紙が貼ってあり、その中に植物の種が入っています。
竹中工務店 山崎篤史さん:
「この構造体も全部木からつくられているので、最後土に返ることができるんですけど、それによって種から生えてきた植物が(建物を)覆っていくことで、最後森になるっていう建築になっています」
使い終わっても自然に還るため焼却処分する必要がなく、CO2を出さない未来の建築。
実は、こうした脱炭素と資源循環のための先進的な技術や取り組みが、「グリーン万博」なのです。

例えば、万博のシンボル「大屋根リング」もその一つ。世界最大の木造建築物としてギネス世界記録に認定されていますが、万博が終わったら木材を処分せず、リユースすることで脱炭素への貢献を目指しています。

さらに、万博にはCO2を吸収するという新たな技術も。
中央に植物が植えられている、ちょっと変わった形のベンチは、名古屋大学発のスタートアップ企業が開発した二酸化炭素を吸着する素材・MOF(モフ)が練り込まれている、CO2を回収するイス。
MOFは、気温が下がると二酸化炭素を吸着。気温が上がると植物が入ったカプセル内で放出し、植物の光合成を促進させるのです。
SyncMOF 堀彰宏 副社長:
「CO2って人類共通の課題だと思う。(CO2を)僕らの素材で集めてあげると資源に変わります。今後、この材料が世界を解決するツールになる」
夏も快適! 薄くて軽い着用できる太陽電池

万博会場で一部のスタッフが着ているものにも、最新技術が導入されていました。
「ペロブスカイト太陽電池」という、太陽光で発電できる電池が搭載されたベストです。発電した電力はバッテリーに貯めて使用することができ、首にかける冷却ファンなどにつなげば、太陽電池の発電で動かせます。

これまで太陽光の発電というと、広い土地や屋根にあるような大きなパネルのイメージがありましたが、「ペロブスカイト太陽電池」は“軽い” “薄い” “曲げられる”のが特徴。ガラスに組み込むことや、壁に貼ることも可能です。
実用化の課題は“耐久性”と“コスト”。現状は劣化が早く、価格も割高になっています。
愛知県では普及を後押しするため、早くて今年12月から県庁舎など県の施設の壁などで実証事業として設置を始めるということです。
巨大装置がCO2だけ回収! “夢の技術”だけど…

万博の中には、さらに進化した“未来の森”がありました。
中に入っても森という雰囲気ではありませんが…ここはどういう場所なのでしょうか。“未来の森”の研究をしている余語さんに話を聞いてみました。
公益財団法人RITE 余語克則さん:
「ここは、森のように空気中のCO2を人工的に回収する技術を研究している場所です。なので“未来の森”という言い方をしています」

Direct Air Capture、通称DACという装置で、森のようにCO2を回収するというのです。
大きく空いた口で空気を吸い込む全長7メートルの巨大なファン。この装置の中にCO2を吸着する特殊素材が組み込まれているといいます。

その効果を示す実験映像がありました。ペットボトルの中にCO2を吸着する素材とCO2を入れると、徐々にペットボトルがへこんでいき、CO2が吸着されたことがわかります。

この施設では、甲子園球場5個分ほどの森に相当するCO2の吸収量があると推定されています。回収したCO2の一部は水素と反応させてメタンガスにし、会場内の厨房で再利用されています。
他にも、二酸化炭素を地下2000メートル以上の地層に閉じ込めてしまうという驚きの技術も開発中だということです。

実現すれば、温暖化の原因となっている大気中の二酸化炭素を確実に減らすことができる、まさに夢のような技術。これで地球温暖化の問題も解決できるのではないかと思いますが、研究を続ける余語さんからは“意外な言葉”が…
公益財団法人RITE 余語克則さん:
「この装置があればCO2は回収できますが、なるべくエネルギーを削減してコストも抑えるということが必要になってくる」
現状、DACを動かすには大量の電力が必要で、設置や運用に多額のコストがかかるといいます。革新的な技術である一方、"最後の砦"として活用することが理想だといいます。
技術に頼るだけでなく、私たち一人ひとりがCO2をなるべく出さないように心がけることが、地球沸騰化の最も重要な対策なのかもしれません。