「熱中症特別警戒アラート」の発表条件に緩和の動きも 2024年の猛暑でも「発表ゼロ」一体なぜ

全国で夏日となるなど暑い日が続いています。熱中症の危険度を知らせるアラートの運用が4月23日から始まりましたが、運用方法に課題も見えてきました。取材を進めると、環境省が「熱中症特別警戒アラート」の発表条件の緩和について検討していることが分かりました。

4月24日は高気圧に覆われた影響で、晴れて各地で気温が上がりました。豊田市や新城市などでは最高気温が25度を超え、夏日となりました。名古屋市内では日傘を差したり帽子を被ったりして、暑さをしのぐ人たちの姿も見られました。
30代男性:
「暑くなるのが早い感じがする。この先、夏に向けてもっと暑くなると思うと気が重い」
30代男性:
「もう無理です。3月の頭から半袖半パンで過ごしています」
20代女性:
「日焼け止めを結構早く始めた。4月入ってから紫外線を気にして」
季節外れの暑さで気を付けたいのが熱中症です。国は熱中症のリスクを「熱中症警戒アラート」、さらにそれよりも危険な「熱中症特別警戒アラート」で知らせています。

熱中症のアラートの出し方について、上野高明気象予報士に聞きました。
上野気象予報士:
「熱中症の基準となる指数があります。『暑さ指数』です。暑さ指数は、気温と湿度、周辺の熱環境の3つの要素を取り入れた指標のことです。アラートの策定にも携わった中京大学の松本孝朗教授に話を聞くと『気温が9割と思っていい』と話していました。
熱中症警戒アラートは、都道府県内のいずれかの地点で、暑さ指数が33以上となる場合に発表されます。環境省によりますと、2024年は日本全国で1722回発表され、過去最高でした。
一方、2024年から運用が始まったのが『熱中症特別警戒アラート』です。こちらは都道府県内の“すべて”の地点で暑さ指数が35以上となる場合に発表します。こちらは2024年、一度も発表はありませんでした」

――環境省が「熱中症特別警戒アラート」の発出基準を見直しているとのことですが、今の基準は厳しいのですか。
上野気象予報士:
「そもそも県内全地点の暑さ指数が35以上というのがものすごく高いハードルです。
2024年、熱中症警戒アラートが発表された日を例に見てみます。7月27日午後2時の暑さ指数の実況値で比べてみます。この日の名古屋の最高気温38度、暑さ指数は33。それ以外の豊田・岡崎で33以上、沿岸部の南知多や豊橋でも32に迫る危険ランクの暑さ指数でした。
しかし、山間部の稲武では30.4。ほかの地点と比べると標高が高く、比較的涼しい地域で暑さ指数も上がりにくいです。このときの稲武の最高気温は33.5度でした。そもそも気温は上がりにくく、海風も届かないので湿度も低めとなりました。『熱中症特別警戒アラート』の基準となる全地点35以上の暑さ指数というのはかなりハードルが高いのです。
そこで環境省は『特別警戒アラート』の発出条件の緩和を検討しています。環境省では、気温が低い山間部を除くことも検討しています」
なぜ熱中症特別警戒アラートの基準は高いのか

なぜこれほどまで高いハードルにしたのか。アラートの策定にも携わった中京大学の松本孝朗教授に上野気象予報士が取材をしました。
上野気象予報士:
「すべてで暑さ指数を35という厳しい条件。なぜこの条件にしたのですか」
中京大学 松本孝朗教授:
「数年前にカナダの寒冷地で気温が40~45度が1週間くらい続き、死亡者が大きく増えることがあったんです。それがもし日本で起こったときに何か対策をしておかないといけないというのが始まりです。名古屋市の気温が45度に届いた、というようなことにならないと(特別警戒アラートは)出ないと思います」
上野気象予報士:
「特別警戒アラート発出条件の緩和についてはいかがですか」
松本教授:
「あり得ると思いますね。人口の多い平地の地域のためを考えれば。ただ(アラートを出すと)事業所も学校も止めないといけない。あまり軽々しく出してはいけないというのも事実です」