「百日せき」感染者は2024年1年間の2倍以上 乳児は「せき発作」や合併症で命の危機も 対策を解説

いま要注意なのが「百日せき」です。2025年に入って全国的に感染が拡大していて、週ごとの感染者数は4週連続で過去最多を更新しています。年ごとの感染者数を見てみると、すでに2024年1年間の感染者数の約2.3倍です(4月20日時点)。子どもや赤ちゃんの感染が約9割を占めています。百日せきはどんな病気なのか、症状や感染対策を解説します。

百日せきとは「せき」が長引く感染症のことです。発症から回復まで約2カ月から3カ月かかるといわれ、この回復までの期間が長いことから「百日せき」との名前が付きました。

感染力の強い病気で、感染者の「せき」や「くしゃみ」で出た飛沫を吸い込んだり、菌が付着した手や物などを触ったりして感染するといわれています。
具体的な症状は最初の2週間程度は鼻水や軽いせき、微熱といった軽い風邪のような症状ですが次第にせきの回数が増え激しくなります。悪化すると激しいせきでろっ骨が疲労骨折することもあるとのことです。
短いせきが連続で出る「せき発作」が起きやすい

せきの症状は子どもと大人で異なることがあるそうです。子どもの場合、息をする間もないほど短いせきが連続して出る「せき発作」が起きやすいんです。発作の直後の呼吸は一気に息を吸い込むので、「ヒュー」っという音がするのが特徴です。これが百日せきの判断材料の1つになります。
一方、大人はせき発作が少ない傾向にあるため、風邪や気管支炎と間違われやすいそうです。

そして特に注意が必要なのが生後6カ月以下の乳児。重症化リスクが高いんです。厚生労働省によると、百日せき特有のせきが出ない場合も。苦しそうに息を止める無呼吸発作や、血液中の酸素が不足して顔色やくちびる爪の色が紫色に見えるチアノーゼといった症状が見られることもあります。
また合併症で肺炎や脳症などを発症する場合もあり、命を落とすケースも報告されているのでせき以外のサインを見逃さないことが大事です。

感染拡大の大きな要因について、感染症に詳しい愛知医科大学病院感染症科の三鴨廣繁教授に聞きました。三鴨教授によると、中国からのインバウンドの増加だと指摘します。中国では現在百日せきが流行していて、旅行客によって日本に菌が持ち込まれ、感染が拡大したのではないかと話していました。
症状の軽い大人が感染を広げている可能性

さらに三鴨教授は「知らないうちに大人が感染を広げている」可能性も高いといいます。
先ほどお伝えしたように大人は子どもに比べて症状が軽いことが多く百日せきの診断がつきにくいんです。このため大人は百日せきの自覚がないまま、感染を広げる可能性があります。実際に家庭内で大人から子どもに感染が広がるケースも報告されているといいます。
ワクチン接種で発症リスクを9割程度減

対策方法として柊みみはなのどクリニックの内藤孝司院長は「まず基本的な感染対策の手洗い・うがいが大切」と話します。そして人が多く密閉された空間に長時間いることは避けてください。さらに最も大事だというのがワクチン接種です。ワクチンで発症リスクを9割ほど減らす事ができ、発症したとしても症状が軽くなるそうです。
重症化リスクが高い小さな子どもは、生後2カ月~2歳までの間に百日せきを含むワクチンの定期接種を無料で受けられます。
妊娠中のワクチン接種で、胎児にも抗体ができる

内藤先生によると、お母さんが妊娠中にワクチンを接種することで胎児にも抗体ができ、乳児期の百日せきを予防できるとのこと。妊娠27週から36週の妊婦を対象にワクチン接種を行っている医療機関がありますので検討してみてください。
ワクチンの効果は3年から5年で薄れて10年から12年でほぼなくなるといわれています。そのため内藤先生は、前の接種から時間が経っている人には子ども、大人を問わず再接種を推奨しています。特に小さなお子さんがいる家庭は、感染対策を心がけましょう。