世界初の尿で「7つのがんのリスク」判定可能 検査キット価格は約7万円 名古屋大学発スタートアップ開発

尿から「7つのがんのリスク」が判定できる検査キットを名古屋大学発のスタートアップが開発しました。あくまで簡易検査ですが、病院に行って採血したり、CTをとったりする必要もなく、自宅で採った尿を郵送するだけ。がんの早期発見につながると期待されています。
クライフの技術とその背景

クライフは名古屋大学の安井隆雄教授と小野瀬社長が共同で設立しました。尿からマイクロRNAを取り出し、人工知能で解析する技術を発見したことで、がんの早期発見が可能になりました。マイクロRNAは細胞間のやりとりを担う“メール”のような役割を果たします。つまり、がん細胞が生まれた際の「やりとり」を見つけることができれば、がんの早期発見も可能なのです。

尿から取り出したマイクロRNAを人工知能で解析します。判定の精度は90%以上。この方法による検査の実用化は、世界初です。
――がんリスクが高いという結果が出た場合、がんになったと思ったほうがいいですか?
クライフ中部検査センター 坪井智子センター長:
「可能性があるということで、これをきっかけにリスクが高い人は病院にいって検査を受けてほしいです」
北海道での検診率向上の取り組み

肺がんの死亡率が全国ワーストの北海道。そこでクライフは北海道大学と共同で、北海道岩内町の住民など100人に無償で検査を実施しました。目的は検診率のアップです。
北海道大学病院 呼吸器外科
加藤達哉教授:
「検診率の低さもワーストで、これを改善しない限りは死亡率の改善につながりません」

実際に参加者1人から肺がんがみつかりました。ただステージはゼロ。本当に初期の段階でした。
加藤教授:
「こういった方はとれば治ります。手術時間は1時間ぐらいです」
すい臓がんの早期発見に向けた挑戦

そしていま狙いを定めているのが、早期発見が難しいすい臓がん。死者の数を見ると、種類別では胃がんを抜いて3位です。
名古屋大学大学院 消化器内科科学
川嶋啓揮教授:
「肺がんや胃がんは胃カメラとかCTの検査とかで早期に見つけることができますが、すい臓がんは早期に効率的に見つける検査方法がないんです」

マイクロRNAの解析技術を使えば、すい臓がんの早期発見も可能になります。クライフはこの技術で62億円の資金調達に成功し、さらなる発展を目指しています。
クライフ 小野瀬隆一社長:
「日本が一番先に走る形で、次はアメリカです。世界中でがんが劇的に早く見つかって、がんで亡くなる人を大きく減らしていくことが我々が目指すところです」
※小野瀬さんの「瀬」の「頁」は「刀」に「貝」

日本経済新聞社 ビジネス報道ユニット
門岡春花記者:
「課題は7万円という価格です。ただ、企業が福利厚生の一環として費用を負担する動きも出始めています。すい臓がんに限っては、薬事承認を申請していて、保険が適用されるようになるとさらに普及が加速するのではと期待されています」